青空つぐみ ネタバレ。 『がっこうぐらし!』第78(最終回)話のネタバレ&最新話!あれから3年

この青空に約束を― ようこそつぐみ寮へ

青空つぐみ ネタバレ

「」大賞受賞作品(シナリオ賞、主題歌賞、純愛系作品賞、ユーザー支持賞も受賞)。 概要 [ ] に戯画より発売された。 物語は『パルフェ』の2年度後の新学期から始まり、同作から引き継がれたゲームシステムに、イベントモードの追加などといった改良がなされている。 スタッフによる公式の日記にも「 こんにゃく」と表記してあったり、テレビアニメ版公式のドメインにも「konnyaku」が含まれている(を参照)。 「」にて大賞を受賞するなど 、評価の高い作品である。 Web上でのダウンロードコンテンツとして、主題歌やOPムービー、に加え、メインヒロイン6人のボイスドラマなども配布された。 なお、ボイスドラマは上記とは別のものが、予約特典として用意された。 また、体験版は先行体験版(『パルフェ Re-Order』に収録され、後にWeb配布された)だけでなく、発売を間近に控えた時期には、新たに3週連続でWeb配布された。 これは3つつなげるとストーリーの1つの流れが完結し、クライマックスとなるところまでを収録したもので、1人のキャラルートの約3分の1近いボリュームがあるものだった。 ただし、製品版の発売は1週間延期された。 これは3作品のヒロインたちが入り乱れて織りなすストーリーを5本収録し、総収録時間99分という大ボリュームのものとなった。 このCDのほか、スペシャルグッズを詰め込んで「戯画セット'06夏」としてコミックマーケット70、コミックトレジャー8、戯画通販にて販売された。 特典なし。 通常版:特典なし。 初回限定版特典:オリジナルサウンドトラック(CD3枚組)、ネックストラップ。 通常版:特典なし。 特典なし。 パッケージイラスト変更。 特典なし。 パッケージイラスト変更。 特典なし。 島の産業を支えてきた出水川重工の撤退により過疎化が進み、学園旧校舎を改装した学生寮・つぐみ寮も住人が航とヒロイン4人+寮長の沙衣里だけとなり、来年春には廃寮になることが既に決定していた。 そんな4月初め、高見塚学園へ転入してきた凛奈がつぐみ寮へ入寮する。 ツッパって誰とも馴染もうとしない凛奈に、航は「お前を俺無しではいられなくしてやる!」と自分達の仲間へ引きこむことを宣言。 かくして航と凛奈の戦いに、廃寮を早めようとする寮外の陰謀も絡み、つぐみ寮生達の「約束の日」までの最後の一年が始まる。 血液型:AB型。 高見塚学園2年生。 生徒会副会長、後に会長となる。 つぐみ寮の人間が少なくなったことから唯一の残っている男子生徒となる。 熱血漢で、ちょっと無茶しても物事をやり遂げようとする性格。 学園に入学する前からよく女の子に声をかけ、島全体で声をかけていない人間がいないと言われるほどである。 運動神経は抜群であり、180 cmでダンクを決められるほどのバネも持っている。 しかし成績が悪く、補習の常習者である。 そのため、毎回試験を海己や奈緒子の助けを借りながらぎりぎりで切り抜けている。 また、喧嘩や学園祭でゲリラライブをやったりなど停学経験もあり、凛奈の件を含めると3回停学を受けている。 だが、島内では色々な人間に話しかけられるほど人望があり、意識はしていないが、学園内で結構モテている。 家族は両親は共にいなく、祖父母の家で生活している。 祖父母の前では猫をかぶっており、基本的に敬語で接している。 幼馴染である海己のことは馬鹿にしながらも、常に庇っている。 また、やなどの楽器も得意で、よくつぐみ寮の屋上で星を見ながら吹いている。 なんでも得意(勉強以外)なので、海己曰く飽きっぽい性格である。 勉強もやらないだけでできない訳ではなく、ルートによっては東京へ進学したり教員資格も取れるほどである。 身長:161 cm 体重:49。 血液型:O型。 つぐみ寮にやって来た「新入り」。 高見塚学園2年生。 航とは最悪の出会いをし、その後同じクラスになった。 初めは寮生とはあまり親しく関わろうとせず、航達との付き合いを避けていたが、航が凛奈を寮の仲間に取り込もうと、マラソン大会で決着をつけることになり、その勝負を受けることになる。 航達の凛奈を真剣に受け入れる思いに触れ、大会の結果は関係なく、改めてつぐみ寮生の一員となった。 航達と出会った当初は、自己中心的で粗暴なように見えるが、仲間思いの優しい心を持つ所謂である。 また、やると決めたことに一生懸命になる場面もある。 中・長距離の実力は全国レベルであるが、その割には胸も体重も大きい。 1500から10000まで対応できるマルチランナー。 卒業後はマラソンへ転向する。 つぐみ寮生の一員となった後、たった一人で陸上部を立ち上げ放課後になったら毎日練習をしている。 また、マラソン大会によって下級生のファンができている。 航同様に運動神経は抜群だが、やはりと言うべきか、成績は悪い。 そして、激しく大食らいで、毎日ご飯を4杯ぐらいはお代わりしている。 航と対決して以来、彼と張り合うことを大いに楽しんでいる。 彼女は昔、南栄生島にいたことがあり、島から離れるとき合わせ石を誰かと分け合っていた。 その合わせ石を左耳にイヤリングとして使っている。 彼女は合わせ石の相手を航だと思っていたが、実際の相手は三田村隆史。 身長:158 cm 体重:48 kg。 血液型:A型。 航の幼馴染。 高見塚学園2年生で航や凛奈と同じクラス。 2-A委員長兼生徒会書記。 後に高見塚学園の生徒副会長となる。 家族は父親のみ。 父親は出水川重工で働いており、ほとんど会社にこもっているためあまり会う機会がない。 航とはかなり長い付き合いなため、毎朝起こしにきたりする。 また、かなり航に依存気味である。 気が弱く、よく部屋の隅で泣きべそをかいていたりする。 また、かなりのあがり症で、全校生徒の前で話すときはしどろもどろとなる。 たまに、空気を読めない発言をしており、凛奈や茜を唖然とさせている。 料理が得意で寮の食事係を担っており、よくジャージ姿で裏庭の家庭菜園をいじっている。 なお寮内では彼女以外にまともに料理を作れる人がいないため、彼女が病気などの理由によって食事を作れないとつぐみ寮は危機的状況に陥る。 彼女の母親と航の父親は昔恋仲で、星野家の人々に反対されてそれぞれ別々の人と結婚。 だが、南栄生島で再会し、航の母親が他界したときに2人で駆け落ちしている。 そのことから羽山家は星野の人間から絶縁されたが、航は周りの人間から黙って彼女と寮で生活している。 身長:165 cm 体重:52 kg。 血液型:AB型。 3-Aクラス委員兼生徒会長。 高見塚学園3年生。 学園にいる間は誰にも愛想がよく優秀な生徒として見られ教師や男子生徒や女子生徒からも慕われているが、実際は猫を被っており、寮に戻ると本性を表す。 姉御気質で6つも年長である沙衣里よりも頼りにされている。 航とは高見塚学園に入学する前(2年前)からの知り合いで、実は双方共に初体験の相手。 航の事は子分のように扱っている。 身長:154 cm 体重:44 kg。 血液型:A型。 学園理事長の孫で、理事長代理兼つぐみ寮大家。 愛称は「宮」。 祖父はイギリス人であり、銀髪のクォーターである。 高見塚学園1年生。 1-A委員長兼生徒会委員。 元々箱入り娘でだったが、正月につぐみ寮に来た時に航と出会ってから運命が変わり、六条家の別荘があるにもかかわらずつぐみ寮で生活している。 寮での大いに刺激的な生活の中で少しずつ壊れ始め、周りからはお嬢様だと見られず普通に接されている。 そのためか、建部に一度理事長の孫であることでひいきされそうになった時は嫌な顔をしている。 とはいえ、学園の通学路で黒塗りの車に乗っている場面も多い。 手先が絶望的に不器用で料理ダメ、運動ダメ、通称「どんくさ宮」。 卵を割るとほぼ確実に黄身の形が崩れてしまう(そのため朝食は目玉焼きだったはずがスクランブルエッグになることもしばしば)。 廊下でこけたりとドジをする場面も多い。 航からよくいじめられる(ほとんどは自業自得)が、航の事を慕っている。 特技は駄洒落にまじめに解説を加え場をしらけさせること。 また、怪談なども好き。 航の事は先輩と呼び、他の先輩には名前に先輩付けで呼んでいる。 だが、航の事を「先輩」としか呼ばず名前を言わないため、相手を戸惑わせることもしばしば。 両親はほとんど家にいないため会う機会がないが、両親の事は尊敬している。 理事長であった祖父とは一度も会ったことがないらしい。 身長:147 cm 体重:41 kg。 血液型:O型。 物静かで少々行動が掴みづらい女の子。 高見塚学園1年生、生徒会委員。 両親からをされていたため、その影響で出会ったときは全く感情を表に出さなかった。 その後、航に拾われ沙衣里が身元引受人となり、学園入学前から寮に特例で居座わるようになる。 その際、航や他の寮生たちとの生活を通して少しずつ感情を表し始める。 とてもおとなしいが、運動神経は抜群。 それなりに器用なようで、宮穂と一緒に料理をした(と宮穂は主張している)時には実質全ての調理を自分でやっていた。 猫のように気まぐれであり、楽しいことは積極的に参加するが楽しくないことはまったく興味を示さない。 そのためか、猫のように驚く場面もある。 つぐみ寮の中では拾い主である航の事を一番慕っており、野原で自分の生活ぶりを話したり、航が風呂に入っている時でも普通に入ってくる(着用)。 エピローグの世界で唯一成長した姿を表す。 その際、髪が長くなり大人びているため一瞬誰だか気づかれないことも多い。 口調が変わっているが、性格はそんなに変わっていない。 身長:153 cm 体重:44 kg。 血液型:B型。 高見塚学園の国語教師(2年目)で、航達のクラス2年生の担任。 年齢は23歳。 つぐみ寮の寮長兼生徒会顧問。 凛奈が陸上部に入部してからは、陸上部の顧問も務める。 生徒達からは「 さえちゃん」と呼ばれて親しまれており、先生としてあまり見られない。 いわゆるダメな人で、寮生の前で堂々とビールを飲んで酔っ払ったりもしている。 その際名門東津本女子大を本人曰く「優秀な成績で卒業」しながらこの離れ小島の小学園にしか就職先がなかったことを、今でも愚痴っている。 自分よりも頼られている年下の奈緒子に対抗意識を燃やしており、毎日のように口喧嘩をしているものの連戦連敗。 サザンフィッシュの客のサークル大学生と合コンをたびたび開いている。 航の事を意外に頼りにしている。 教頭から命令されつぐみ寮の寮生の事を調べたりと学園側で動いているが、つぐみ寮のことを大事に思っており、つぐみ寮を守るために日々努力している。 身長:152 cm 体重:45 kg。 血液型:B型。 高見塚学園2年生。 凛奈が転校する1日前に学園に転校してきた少女。 とても明るく弁舌なためクラスにもすぐに溶け込み、周りの人間からほとんど転校生とは思われなくなるほど。 かなりの早口で喋り、3分以上無呼吸で喋り続けることが出来るらしい。 また、トークではボケ専門で、よく航や雅文にツッコミされる。 航のことに好意があるらしく、航なら付き合ってもいいような発言をしているが航からは本気にされていない。 航と過去に合わせ石を分け合った本当の相手でもあり、彼女もまた航のことを覚えている。 『まるねこ 戯画スペシャルドラマCD '06』『フォセット』で、チロル()と共にちょっとワケあり、ハイテンションかしましコンビとして司会進行をやったりしている。 茜の兄。 航にとっては頼りになる兄貴分であり、よく相談に乗ってくれたりアドバイスをしてくれたりすると同時に、航にナンパのテクニックを教えた師匠でもある。 高見塚学園のOBであり、航以上に色々と問題を起こしており、過去に5度の停学経験を持つ。 今でも航が学園祭でゲリラライブを起こす時には参加したりして問題を起こしている。 夏休みに泊り掛けの女性客を口説いたりと女癖が悪いが、航や雅文といった弟分の本命である女の子には手を出さないと語っている。 学園の人からも結構尊敬されているが、茜が転校してきて以後かなりのシスコンぶりを発揮し、株が落ち始めている。 三田村家の愛犬。 茜が幼い頃から飼われている。 何故かサングラスをしている。 かなり人懐っこい。 高見塚学園 [ ] 生徒 [ ] 久藤 ちひろ(くどう ちひろ) 声 - (PSP版) PSP版追加ヒロイン。 高見塚学園2年生。 航や雅文らのクラスメートで、航の後ろの席。 1学期の終わりに航に告白をして、周囲を驚かせる。 航とは中学からの同級生で、その頃から内気で目立たない少女だった。 航のことも最初はうるさいぐらいにしか思っていなかったが、ある夢をきっかけに航に好意を抱くようになる。 告白後も気恥ずかしさから航から逃げ回っていたが、つぐみ寮生の協力で捕まり、つぐみ寮生に勝負を挑むも惨敗。 しかし、このことがきっかけで航含むつぐみ寮生と仲良くなっていった。 どんくささでは宮といい勝負であるが、逃げ足だけは凛奈にも匹敵し、ステルス性でも静と同クラス。 家事全般は掃除以外最初はダメだったが、料理は海己に仕込まれてできるようになったことから、やらないだけでできないわけではない。 前述のように内気ではあるが、つぐみ寮生(奈緒子)に勝負を挑まれても一歩も引かないなど実は負けず嫌い。 航に突然告白した理由は8月末に転校が決まっていたからで、航やつぐみ寮生との別れも半ば受け入れ、諦めていたが、航の励ましでそれまですれ違い気味だった両親に初めて反抗。 つぐみ寮生の説得もあったが最終的にその決意が、つぐみ寮への入寮を反対していた両親の心を動かして島に残ることになり、晴れてつぐみ寮の8人目の寮生となった。 航の親友であり、はとこ。 航達のクラスメートでもある。 軽い性格で浮気性が強いが、航にとってはいざという時に頼りになるよき相棒。 航や隆史と共に学園祭でゲリラライブを行ったりして停学経験もある。 浮気性ではあるものの紀子のことは本命であり、付き合っている。 航や雅文らのクラスメートで、海己とは長い付き合いの親友同士。 落ち着いた性格ではあるが、学園祭で劇を盛り上げようとしたりと実行力がある。 冷静な突っ込み役(主に雅文に対し)。 奈緒子にあこがれており、よく親しげに話しかけてくる。 マラソン大会では、実行委員を務めた。 宮穂と静のクラスメートで、凛奈と奈緒子のファンである。 美希子同様、宮穂と静のクラスメートで、凛奈と奈緒子のファンである。 ケーキ作りが得意。 ほとんど教頭といる時が多く、絵に描いたような冷徹・陰湿な人物であり、悪徳政治家並の裏側を隠している。 将来は町長選に出馬をし、南栄生島のリゾート化計画を企んでいる。 航や凛奈の存在を疎ましく思っており、学園長と共に、いろいろな陰謀を企てている。 そのため、沙衣里に色々と指示を与えている。 野川がいなくなった後は学園長となっている。 尊大な性格だが、権力には弱い。 航を毛嫌いしており、目の敵にしてくる。 後に教頭に昇進し、塚田のイエスマンとなる。 生徒のことをしっかり考えてくれる善き人物。 生徒からは「 じいちゃん先生」と呼ばれ、親しまれている。 生徒たちの兄貴的存在。 隆史の学園時代の担任で、問題児だった隆史をよくかばってくれた。 性格は単純で快活だが、航を根性の甘いお坊ちゃんと誤解していた。 吉倉とは仲が良い。 新城 由香里(しんじょう ゆかり) 高見塚学園の教師。 常に落ち着いている。 女子生徒からの信頼が厚い。 小杉(こすぎ) 高見塚学園の教師。 地味でおとなしい。 65歳。 頑固な性格で、よく航に説教する。 かつては町議会の議員を務めていたが、現在は退職している。 実は学園長及び教頭と同級生。 69歳。 いつも航に優しい。 頑固な一誠を上手くコントロールしている。 内山 延年(うちやま のぶとし) 一誠の甥で雅文の父。 37歳。 もののわかった人物。 そのため、一誠からかなり頼りにされている。 32歳。 出水川重工社員。 いつも会社で忙しく、ほとんど家を留守にしている。 そのため、海己からお弁当や洗濯ものなどの受け渡しを行っている。 穏やかでおとなしい性格だが、少々腰が低い人物である。 三好 八重子(みよし やえこ) 出水川重工の研究者。 凛奈の父のであり、凛奈は彼女のことを毛嫌いしていたことが、つぐみ寮に来たきっかけとなっている。 普段から化粧っけもなく、服装も常に白衣を着用している。 性格はさばさばしており、悪い人物ではない。 年齢よりも若く見えてしまうことが悩みとなっている。 享年63歳。 旧名 ウィリアム・エルガー。 本編の前年に他界。 50年程前に来日し、英語教師として定住した。 その後、六条家のとなり、出水川重工の関係者となる。 晩年に島へ戻り、郷土史をまとめつつ、高見塚学園のの職に就く。 日本文化が大好きであった。 主家への忠義がとても強い古めかしい感じの人物。 宮穂の車の運転手も勤めている。 宮穂のことを常に心配している。 永森 はな(ながもり はな) 屋の店主。 島の歴史に詳しく、宮穂に紀一郎のことを教えてくれた。 神山工房で 合わせ石を販売している。 また、合わせ石の商品化の発案者でもある。 大の好き。 現在はに在学中(理工学部)。 人柄がよく、困っている人は見逃せないタイプ。 奈緒子が2年前、密かに片思いしていた相手。 奈緒子から「 ヒロ先輩」と呼ばれている。 アニメ版では「辻崎ヒロ」と表記されている。 ゲームソフト [ ] スタッフ [ ]• シナリオ: with 企画屋• 原画:• 背景美術:草薙• BGM:なるちょ• 主題歌:• ED、挿入歌:• ムービー:• 初回限定特典CD• 予約特典ドラマCD 「プレ・プロローグ その2」• メッセサンオー予約特典ドラマCD 「仲直りの1時間」 批評 [ ] 『ファミ通』2015年12月24日号にてPlayStation Vita版のレビューが掲載された。 4人のレビュアーがそれぞれ7, 7, 7, 7点をつけ、40点満点中28点を得た。 シナリオに関しては、物語のテンポがよく楽しく読み進められる、女の子に囲まれる日常は楽しげで各ヒロインの事情が明らかになる後半の展開は感動的、非現実的な舞台での日常風景がミステリアスかつコミカルに描かれている、各ヒロインが魅力的でルート確定後にも想いが引きずられる、日常的な場面の積み重ねが中盤以降でグッと来るなどの意見が寄せられた。 システムに関しては、既読したイベントは概要が表示される点、ルート分岐条件や各種イベントの達成度を確認できる点が便利であると述べられたが、インタラクティブ性がもう少し欲しいとの意見もあった。 総評としては、キャラデザインやシステムにおいて目を見張るような特徴は見受けられないが、全体的に丁寧に作られており王道の恋愛アドベンチャーゲームといえると述べられた。 全13話。 の音楽で知られているが、初めてアニメの音楽を担当した作品である。 スタッフ(アニメ) [ ]• 監督 -• 監督補佐 - 安藤健• シリーズ構成 -• キャラクターデザイン・総作画監督 - 花井宏和• ゲストキャラデザイン - 小関雅• 美術監督 - 倉田憲一• 色彩設計 - 福谷直樹• 撮影監督 - 斎藤秋男• 編集 - 村井秀明• 音響監督 -• 音楽 -• プロデューサー - 、浅香敏明、丸山充弘、小柳路子、松永裕一• アニメーションプロデューサー - 渡辺秀信• アニメーション制作 -• 全5話。 3頭身のメインキャラ達がおくる約1分弱のショートコメディ。 サブタイトル• 第一話 陸上部発足秘話• 第二話 航く〜ん• 第三話 寮生の悲願• 第四話 ある教師の日常• 第五話 ベランダにて 関連商品 [ ] 書籍 [ ]• 1 沢城凛奈(声:)(2007年6月6日発売)• 【BOX付初回限定版】 ZMCZ-3400• 【通常版】 ZMCZ-3401• 2 羽山海己(声:)(2007年6月6日発売、ZMCZ-3402)• 3 浅倉奈緒子(声:)(2007年6月20日発売、ZMCZ-3403)• 4 六条宮穂(声:)(2007年6月20日発売、ZMCZ-3404)• 5 藤村静(声:)(2007年7月4日発売、ZMCZ-3405)• 6 三田村茜(声:)(2007年7月4日発売、ZMCZ-3406) ファンディスク [ ]• フォセット - Cafe au Le Ciel Bleu -• 『』との合同ファンディスク、『』が2006年に発売。 出典 [ ] []• 2014年4月23日閲覧。 同賞にてシナリオ賞、ユーザー支持賞、純愛系作品賞、主題歌賞も受賞した。 GREE. 2013年7月29日閲覧。 Mobage. 2013年7月29日閲覧。 mixi. 2013年7月29日閲覧。 (2006年4月号) p. 129. 28(、)• 参考文献 [ ]• 『ファミ通』第30巻第52号、KADOKAWA、2015年12月24日号。 外部リンク [ ]• (年齢確認あり)• - PS2版公式サイト• - PSP版(エンターグラム その他の配信中タイトル)• - PS Vita版公式サイト•

次の

アニメ【あそびあそばせ】7話あらすじネタバレ感想!込められた意味や評価、ラスト結末を解説

青空つぐみ ネタバレ

この物語の主人公は、 彼 ( か )のバルカン地方の伝説『吸血鬼』にも比すべき、人界の悪魔である。 一度埋葬された死人が鬼と化して、夜な夜な墓場をさまよい 出 ( い )で、人家に忍び入って、睡眠中の人間の 生血 ( いきち )を吸い取り、不可思議な死後の生活を続ける場合がある。 これが伝説の吸血鬼だ。 被害者が血を吸われている最中に目覚めた時は、吸血鬼との間に身の毛もよだつ闘争が行われるが、多くは目覚めることなく、 夜毎 ( よごと )に生血を吸いとられ、 痩 ( や )せ衰えて死んで行く。 この妖異を防ぐ為に、人々がそれらしい墓をあばき 棺 ( かん )を開いて見ると、吸血鬼と化した死人は、生々と 肥 ( こ )え太り、血色がよく、爪や頭髪が埋葬当時よりも長く伸びているので、一見して見分けることが出来る。 吸血鬼と分ると、彼等は 杭 ( くい )を 以 ( もっ )て一度死んだその死体をもう一度突き殺すのだが、その時吸血鬼は一種異様の悲痛な叫声を発し、目、口、耳、鼻、皮膚の気孔などから、生けるが 如 ( ごと )き鮮血を 迸 ( ほとばし )らせてついに全く死滅する。 というのだ。 私の書こうとする人界の悪魔の生涯は、どことも知れぬ隠秘の隠れ家から、青白き触手をのばして美しい女を襲い、襲われたものは、底知れぬ恐怖のために 懊悩 ( おうのう )、 憔悴 ( しょうすい )して行くところ、また、可憐なる被害者を助ける 素人 ( しろうと )探偵と悪魔とのすさまじき闘争、ついに悪魔は正体をあばかれ妖術を失って、身の毛もよだつ 最期 ( さいご )をとげるまで、即ち『吸血鬼』一代記に相違ないのである。 茶卓子 ( ティテーブル )の上にワイングラスが二個、両方とも水の様に透明な液体が八分目程ずつ入っている。 それが、まるで精密な計量器で 計 ( はか )った様に、キチンと八分目なのだ。 二つのグラスは 全 ( まった )く同形だし、それらの位置も、テーブルの中心点からの距離が、 物差 ( ものさし )を当てた様に一 分 ( ぶ )一 厘 ( りん )違っていない。 仮りに 意地汚 ( いじきたな )い子供があって、どちらのグラスを取った方が利益かと、目を大きくして見比べたとしても、彼はいつまでたっても 選択 ( せんたく )が出来なかったに相違ない。 二つのグラスの内容から、外形、位置に至るまでの、余りに神経質な均等が、何かしら異様な感じである。 さて、このテーブルを中に 挟 ( はさ )んで、二脚の大型 籐椅子 ( とういす )が、これもまた整然と、全く対等の位置に向き合い、それに二人の男が、やっぱり人形みたいに 行儀 ( ぎょうぎ )よく、キチンと腰をかけている。 紅葉 ( こうよう )には大分 間 ( ま )のある、初秋の 鹽原 ( しおばら )温泉、鹽の湯A旅館三階の廊下である。 開放 ( あけはな )ったガラス戸の外は一望の緑、眼下には 湯壺 ( ゆつぼ )への 稲妻型廊下 ( いなづまがたろうか )の長い屋根、こんもり茂った樹枝の底に、 鹿股川 ( かのまたがわ )の流れが 隠顕 ( いんけん )する。 脳髄がジーンと 麻痺 ( まひ )して行く様な、 絶 ( た )え 間 ( ま )なき早瀬の 響 ( ひびき )。 二人の男は、夏の末からずっとこの宿に居続けの 湯治 ( とうじ )客だ。 一人は三十五六歳の、青白い顔が少し間延びして見える程面長で、従って、 痩 ( や )せ型で背の高い中年紳士。 今一人は、まだ二十四五歳の美青年、いや美少年といった方が適当かも知れぬ。 手取早く形容すれば、映画のリチャード・バーセルメスをやや日本化した様な顔つきの、 利巧相 ( りこうそう )ではあるが、 寧 ( むし )ろあどけない青年だ。 二人共、少し冷え冷えして来たので、 浴衣 ( ゆかた )の上に宿のドテラを 羽織 ( はお )っている。 二つのワイングラスが異様なばかりでなく、それを見つめているこの二人の様子もひどく異様である。 彼等は心の動揺を外に現わすまいと一生懸命になっているけれど、顔は青ざめ、唇は血の気が失せてカラカラにかわき、呼吸は 喘 ( はず )み、グラスにそそがれた目だけが変に輝いている。 「サア、君が最初選ぶのだ。 このコップのどちらかを手に取り給え。 僕は約束に従って、君がここへ来るまでに、この内の一つへ 致死量 ( ちしりょう )のジァールを混ぜて置いた。 ……僕は調合者だ。 僕にコップを選ぶ権利はない。 君に分らぬ様、目印をつけて置かなかったとはいえないからだ」 年長の紳士は、かすれた低い声で、舌がもつれるのを避けるために、ゆっくりゆっくりいった。 相手の美青年は僅かに 肯 ( うなず )いて、テーブルの上に 右手 ( めて )を出した。 恐ろしい運命のグラスを選ぶためにだ。 全く同じに見える二つのグラス。 青年の手が 僅 ( わずか )二寸ばかり右に寄るか、左によるか、その 一刹那 ( いつせつな )のまぐれ当りによって、泣いてもわめいても取り返しのつかぬ生死の運命が決してしまうのだ。 可哀相 ( かわいそう )な青年の額から、鼻の頭から、見る見る玉の 膏汗 ( あぶらあせ )がにじみ出して来た。 彼の右手の指先は空をもがいて、どっちかのグラスに近づこうとあせっていた。 しかし、心はあせっても、指先がいうことを聞かぬ様に見えた。 だが、その間、相手の紳士とても、青年以上の大苦痛を味わわねばならなかった。 彼はどれが「死のグラス」であるかを、チャンと知っていたからだ。 青年の指が右に左に迷い動くにつれて、彼の息使いが変った。 心臓が破れる様に乱調子に 躍 ( おど )った。 「早くし 給 ( たま )え」紳士は 耐 ( た )え 難 ( がた )くなって叫んだ。 「君は 卑怯 ( ひきょう )だ。 君は僕の表情からどちらが そのコップだかを読もうとしている。 それは卑怯だ」 いわれて見ると、無意識にではあったが、彼はあさましくも、相手の表情の 幽 ( かす )かな変化を 見極 ( みきわ )めて、毒杯の方を避けようと 焦 ( あせ )っているのに気附いた。 それを知ると青年は 恥辱 ( ちじょく )の為に一層青くなった。 「目を閉じて下さい」彼はどもりながらいった。 「そんなにして僕の指先の動きを眺めているあなたこそ残酷だ。 僕はその目が怖いのです。 閉じて下さい、閉じて下さい」 中年紳士は何もいわず両眼を閉じた。 目を開いていては、お 互 ( たがい )に苦痛を増すばかりであることが分ったからだ。 青年は 愈々 ( いよいよ )どちらかのグラスを手に取らねばならぬ時が来た。 閑散期の温泉宿ではあったが、人目がないではない。 グズグズしていて邪魔がは 入 ( い )っては面倒だ。 彼は思い切ってグッと右手を伸ばした。 ……何という奇妙な決闘! だが、国家がそれを禁じている現代では、これが残された唯一の決闘手段だ。 昔流に 剣 ( つるぎ )やピストルを用いたならば、相手を倒した勝利者の方が 却 ( かえっ )て殺人犯として処罰を受けなければならない。 それでは決闘にならぬ。 そこで考え出されたこの新時代の劇薬決闘だ。 彼等は銘々「自殺」の遺言状をチャンとふところに用意して、杯を飲みほしたならば、そのまま部屋に帰って 蒲団 ( ふとん )の中へもぐり込み、静かに勝敗を待つ約束であった。 遺言状はお互に見せ合って、一点の 欺瞞 ( ぎまん )もないことが確められていた。 二人はその温泉宿で運命的な一女性に出会ったのだ。 彼等は血を 吐 ( は )く様な恋をした。 彼等にとって、恐らくは一生涯にたった一度の出来事であった。 気の違い相な恋愛闘争! 彼等の滞在期間は一日一日と延ばされて行った。 そして一ヶ月、勝敗はまだ決しない。 相手の女性は彼等の双方に無関心ではなかった。 だが、いつまでたっても、ハッキリした選択を示さないのだ。 彼等はほとんど一時間 毎 ( ごと )に、甘い 自惚 ( うぬぼ )れと胸をかきむしる様な 嫉妬 ( しっと )とを、交互に感じなければならなかった。 今は 最早 ( もはや )この苦痛に耐え難くなった。 相手が選択しなければ、こちらで 極 ( き )めてしまう外はない。 どちらかが引さがる? 思いもよらぬ事だ。 では決闘だ。 昔の騎士の様にいさぎよく命がけの決闘をしようではないか。 と、二人の恋愛狂人の相談が成立った。 笑えない気違い 沙汰 ( さた )である。 …… 三谷房夫 ( みたにふさお )は(それが美青年の名だ)とうとう右側のグラスを 掴 ( つか )んだ。 目を 閉 ( ふさ )いでその冷たい容器をテーブルから持上げた。 もう取返しがつかぬのだ。 彼は 躊躇 ( ちゅうちょ )を恐れるものの如く、思い 切 ( きっ )てグラスを唇に当てた。 瞑目 ( めいもく )した青ざめた顔が、勢いよく天井を振り仰ぐ。 グラスの液体がツーッと歯と歯の間へ流れ込む。 喉仏 ( のどぼとけ )がゴクンと動く。 長い沈黙。 と、目を閉じた三谷青年の耳に妙な音が聞え始めた。 谷間の早瀬の響に混って、それとは別にゼイゼイという 喘息 ( ぜんそく )の様な声が聞えて来た。 相手の呼吸の音だ。 彼はギョッとして目を 開 ( あ )いた。 アア、これはどうしたことだ。 中年紳士岡田道彦は、化物みたいに飛出した両眼で、突刺す様に、あとに残った一つのグラスを凝視している。 肩は異様に波打ち、汗ばんだ土色の小鼻はピクピクと不気味に動き、今にも気を失って倒れ相な断末魔の呼吸だ。 三谷青年は、生れてから、こんなひどい恐怖の表情を見たことがなかった。 分った、分った。 彼は 勝 ( かっ )たのだ、彼の取ったのは毒杯ではなかったのだ。 岡田は、ヨロヨロと椅子から立上って逃げ出し相にしたが、やっとの思いで 己 ( おのれ )に 打勝 ( うちかっ )た。 彼はグッタリと椅子にくずおれた。 一瞬間にゲッソリとこけた土気色の頬。 すすり泣きに似た烈しい呼吸。 アア、何というみじめな闘いであろう。 だが、彼はついに毒杯を取った。 徐々 ( じょじょ )に徐々に、彼の震える手先は、乾いた唇へと近づいて行く。 年長紳士岡田道彦は、見す見す劇薬と知りながら、しかし決闘者の意地にかけて、そのグラスを取らねばならなかった。 だが、グラス持つ手は、彼の悲壮な 痩我慢 ( やせがまん )を裏切って、みじめにも打震え、中の液体がボトボトと卓上にあふれ出た。 三谷青年は、彼自身今飲みほした液体におびえ切ていたので、岡田の 苦悶 ( くもん )を眺めながらも、悪い 籤 ( くじ )を 抽当 ( ひきあ )てたのは岡田の方であることを少しも気附かぬらしく、相手も彼と同じく、ただ、二つに一つの悪運におびえているのだと思い込んでいる様子だった。 岡田は 度々 ( たびたび )勢いこめてグラスを口の 側 ( そば )まで持って行くのだが、いつも唇の前一 寸 ( すん )の所でピタリと止まってしまった。 まるで目に見えぬ手が邪魔をしている様だ。 「アア、残酷だ」 三谷青年は顔をそむけて、思わず 呟 ( つぶや )いた。 その呟きが相手の 敵愾心 ( てきがいしん )を激発した。 岡田は苦悶の顔色すさまじく、最後の気力を 奮 ( ふる )って、遂に、劇薬のコップを唇につけた。 と、その刹那「アッ」という叫び声。 カチャンとガラスの 破 ( わ )れる音。 ワイングラスは岡田の手を 辷 ( すべ )り落て、縁側の板にぶつかり、粉々に破れてしまったのだ。 「何をするんだ」 岡田が激怒に息をはずませて叫んだ。 「イヤ、つい 粗相 ( そそう )をしました。 勘弁 ( かんべん )して下さい」 三谷が、いい知れぬ誇りに目の 縁 ( ふち )を赤くしていった。 何が粗相なものか、彼は故意に相手のグラスを叩き落としたのだ。 「やり直しだ。 やり直しだ。 僕は君の如き青二才の恩恵に浴したくない」 岡田が 駄々 ( だだ )ッ 子 ( こ )の様に 怒鳴 ( どな )った。 「アア、それでは」青年はびっくりして聞き返した。 「悪い籤を抽当てたのはあなただったのですね。 今破れたコップに例の薬がはいっていたのですね」 それを聞くと岡田の顔に「しまった」という表情がひらめいた。 「やり直しだ。 こんな馬鹿な勝負はない。 サア、やり直しだ」 「あなたは卑怯だ」三谷青年は軽蔑の色を浮べて「やり直しをして、今度こそ僕に毒薬のコップを取らせようという訳ですか。 あなたがそんな卑怯者と知ったら、僕はあんなことをするのではなかった。 ……僕はあなたの苦悶を見るに忍びなかった。 それに僕は 已 ( すで )に液体を飲みほしてしまったのです。 それが毒薬であろうとなかろうと、もう勝負は決したのです。 僕が数時間たっても死ななかったら、僕の勝だし、死ねばあなたの勝なんです。 何もあなたが 是非 ( ぜひ )あれを飲まねばならぬ理由はなかったのです」 いわれて見ればそうに違いない。 この勝負の目的は恋であって、お 互 ( たがい )の命ではない。 勝負さえついてしまえば、あとに残った一人の生命をむざむざ 犠牲 ( ぎせい )にすることはないのだ。 とはいえ、敵のコップを叩き落した三谷青年は、みじめに助けられた相手に比べて、二段も三段も男を上げた。 昔の騎士の物語にでもある様な、目ざましい行いだ。 岡田はそれが 口惜 ( くや )しかった。 年長の彼にしては忍び難い恥辱に相違なかった。 だが、彼はあくまで「やり直し」を主張する勇気もなく、 気拙 ( きまず )い顔で沈黙してしまった。 屈辱と命と 天秤 ( てんびん )にかけて見て、やっぱり命の方が 惜 ( おし )かったのであろう。 その時、廊下の奥の部屋の中で、カタンという音がした。 決闘者達は彼等の勝負に夢中になって、少しも気づかなかったけれど、さい 前 ( ぜん )から、その部屋の次の 間 ( ま )の 襖 ( ふすま )の蔭で、彼等の対話を立聞きしていた人物がある。 その人が今隠れ場所を出て、部屋の真中へ歩いて来たのだ。 柳倭文子 ( やなぎしずこ )! それは彼等の恋人の 目映 ( まばゆ )いばかりあでやかな姿であった。 柳倭文子。 アア、この人の 為 ( ため )ならば、三十六歳の岡田と、二十五歳の三谷青年とが、今の世にためしない、不思議千万な決闘を思い立ったのも、決して無理ではなかった。 地味な柄の光らぬ 単衣 ( ひとえ )物。 黒絽 ( くろろ )の帯に、これだけは思い 切 ( きっ )て派手な縫い模様。 上品でしかも 艶 ( つや )やかな 襟 ( えり )の好み、 八 ( や )つ 口 ( くち )の 匂 ( にお )い。 本当の年は三谷青年と同年の二十五歳だけれど、その賢さは年よりも 遙 ( はる )かにふけていても、その美しさあどけなさは 二十歳 ( はたち )に満たぬ乙女とも見えるのであった。 「あたし、 這入 ( はい )って来てはいけなかったのでしょうか」 彼女は何もかも知っている 癖 ( くせ )に、ぎこちなく 睨 ( にら )み合った二人の男の 気拙 ( きまず )さを救う為に、首をかしげ、 花弁 ( はなびら )の様な唇を美しく 歪 ( ゆが )めて声をかけた。 二人の男は答える 術 ( すべ )を知らぬ様に、長い間押し黙っていた。 岡田道彦は、当の倭文子に今の有様を見られてしまったと思うと、重ね重ねの恥辱に、遂に座にいたたまらず、プイと立上って、足音荒く部屋を横切って、反対の 側 ( がわ )の廊下へと歩いて行ったが、さい前倭文子が隠れていた次の間の 襖 ( ふすま )の所で、あとに残った二人を振返ると、何ともいえぬ毒々しい調子で、 「 畑柳 ( はたやなぎ )未亡人、ではこれで永久にお別れです」 と変な言葉を残して、そのまま廊下の外へ姿を消してしまった。 畑柳未亡人とは一体誰のことなのだ。 ここには柳倭文子と三谷青年の外には誰もいないではないか。 だが、それを聞くとなぜか倭文子の顔色がサッと変った。 「マア、あの人、やっぱり知っていたのだわ」 彼女は溜息まじりに、三谷青年には聞き取れぬ程の低い声でつぶやいた。 「あなたは、ここで我々が話していたことをすっかりお聞きになりましたか」 三谷はやっと気を取直して、 極 ( き )まり悪く、美しい人の顔を 仰 ( あお )ぎ見た。 「エエ、でもわざとではありませんのよ。 何気なくここへ這入って来ると、あの始末でしょう。 あたし、つい帰ることも出来なくなってしまって」 そういう彼女の頬にも、パッと血の色が上った。 自分の為にこんな騒ぎまで起ったかと思うと、口ではさかしく応対しても、さすがに 羞 ( はじ )らわないではいられなかったのだ。 「あなたは、おかしくお思いでしょうね」 「イイエ、どうしてそんなことを」倭文子は 粛然 ( しゅくぜん )としていった。 「あたし、本当に身にあまることだと思いました」 彼女はポツンと言葉を切たまま、口を一文字に結んで、あらぬ 方 ( かた )を見つめていた。 泣き顔を見せたくなかったのだ。 でも、いつしか湧き上る涙の露に、彼女の目はギラギラと光って見えた。 倭文子の右の手が、テーブルの端にソッと懸っていた。 細っそりとして、しかも 靨 ( えくぼ )のはいった白い指。 手入れの行届いた可愛らしい桃色の爪。 三谷青年は、恋人の涙に目をそらして、何気なくその美しい指を眺めていたが、いつの間にか 真青 ( まっさお )な顔になって、呼吸の調子さえ乱れて来た。 ……しかし、彼はとうとうそれをやってのけた。 思い切て、その靨のはいった白い指を、上からグッと握りしめたのだ。 倭文子は手を引かなかった。 二人はお互の顔を見ぬ様にして手の先だけに心をこめて、長い間お互の温かい血を感じ合っていた。 「アア、とうとう……」 青年が歓喜に燃えて 囁 ( ささや )いた。 倭文子は涙ぐんだ目に、遙かなる憧れの色を 湛 ( たた )えて、 艶 ( つや )やかにほほ笑むのみで 一言 ( いちごん )も口を利かなかった。 …… 丁度その時、アア何ということだ。 廊下に 惶 ( あわた )だしい人の足音、ガラリと開く襖、そして、ヌッと現われたのは、さい前立去ったばかりの岡田道彦の、不気味にも殺気走った顔であった。 這入って来た岡田道彦は、二人の様子を見て取って、ハッと立ちすくんでしまった。 数秒間、気拙い睨み合いが続いた。 岡田は何故か這入って来た時から、右の手をドテラのふところへ入れたままだ。 ふところに何かを隠している様子である。 「今、永久のお別れだといって出て行った僕が、なぜ戻って来たか、お分りになりますか」 彼は真青な顔を 醜 ( みにく )く引つらせて、ニタニタと笑った。 三谷も倭文子も、この気違いめいた態度を、どう考えてよいのか分らず、黙っていた。 不気味な沈黙が続く間に、岡田の全身が二度ほど、びっくりする程烈しく 痙攣 ( けいれん )した。 が、やがて彼の笑い顔が、 徐々 ( じょじょ )に、みじめな 渋面 ( じゅうめん )に変って行った。 「 駄目 ( だめ )だ。 俺 ( おれ )はやっぱり駄目な男だ」 彼は力ない声で 独言 ( ひとりごと )の様に呟いたが、 「 覚 ( おぼえ )といて下さい。 僕がこうして二度目にここへ来たことを。 ね、覚といて下さい」 といったかと思うと、突然クルッと向きを変えて、走る様に部屋を出て行ってしまった。 「あなた、気がつきましたか」 三谷と倭文子とは、いつの間にか座敷に這入って、ピッタリと 身体 ( からだ )をくっつける様にして坐っていた。 「あの男はふところの中で短刀を握っていたのですよ」 「マア!」 倭文子は不気味相に、一層青年にすり寄った。 「あの男が可哀相だとは思いませんか」 「卑怯ですわ。 あの人は危い命を、あなたの、本当に男らしい、御心持から、助けて 頂 ( いただ )いたのではありませんか。 それに……」 岡田に対する極度の軽蔑と、同時に三谷に対する限りなき敬慕の色が、彼女の表情にまざまざと現われていた。 あの毒薬のコップを叩き落したことが、これ程の感銘を与えようとは、三谷も予期しない所であった。 話しながら、二人の手は、いつかまた握り合わされていた。 その部屋は、奇妙な決闘の為に、 態 ( わざ )と一番不便な、 淋 ( さび )しい場所を、宿には無断で、一時使用したばかりで、誰の部屋でもなかったから、女中などが御用を伺いに這入って来る心配はなかった。 二十五歳の恋人達は、子供の様に無邪気に、あらゆる思慮を忘れて、桃色の 靄 ( もや )と、むせ返る甘い 薫 ( かおり )の世界へ引き込まれて行った。 何を話し合ったのか、どれ程の時がたったのか、何も 彼 ( か )も、彼等には分らなかった。 ふと気がつくと、次の間に女中がかしこまって、声をかけていた。 二人は夢から 醒 ( さ )めた様に、極まり悪く 居住 ( いずま )いを直した。 「何か用かい」 三谷は怒った声で尋ねた。 「アノ、岡田さんが、これをお二方にお渡し申し上げるようにと、御いい残しでございました」 女中が差出したのは、四角な紙包みだ。 「何だろう。 ……写真の様だな」 三谷はやや薄気味悪く、それを開いたが、中の物を 暫 ( しばら )く眺めている内に、当の三谷よりも、横から 覗 ( のぞ )き込んでいた倭文子が、余りの恐ろしさに、一種異様の 叫声 ( さけびごえ )を立てて、その場を飛びしさった。 それは二枚の写真であった。 一枚は男、一枚は女。 だが当り前の写真ではない。 倭文子が飛びしさったのも 尤 ( もっと )もだ。 これよりむごたらしく殺しようはないと思われる程、残酷に 斬 ( き )りさいなまれた、死人の写真なのだ。 犯罪学の書物の挿絵を見慣れた人には、さして珍らしい姿ではないが、女の倭文子には、 絵空事 ( えそらごと )でない写真であるだけに、本当の惨死体を見たと同じ、胸の悪くなる様な 怖 ( こわ )さであった。 男も女も、首が放れてしまう程、深い斬り傷を受けて、その傷口がポッカリと、物凄く、口を開いていた。 目は、恐怖の為に、 眼窩 ( がんか )を飛出す程も、見開かれ、口からは、 夥 ( おびただ )しい真黒な血のりが、 顎 ( あご )を伝わって、胸まで染めていた。 「何でもないんですよ。 あの男、まるで子供みたいな 悪戯 ( いたずら )をするじゃありませんか」 三谷がいうので、倭文子は怖いもの見たさに、また近寄って、不気味な姿を覗き込んだ。 「でも、なんだか変ねえ。 こんなにキチンと腰かけて殺されているなんて」 いわれて見ると、なる程変だ。 惨死体の写真は、戸板の上かなんかに転がっているのが普通なのに、この死体は、生き人形みたいに、行儀よく椅子に腰かけている。 首を斬られながら、チャンと正面を向いている。 不自然なだけに、一層怖い感じだ。 三谷も倭文子も、背中を、ゾーッと、氷の様に冷たいものが這い上るのを覚えた。 見ていると何だかえたいの知れぬ、非常に不気味なものが、ジワジワと、写真の中から、 滲 ( にじ )み出して来る様な気がする。 傷や血のりで汚れたうしろから、ゾッとする様なものが、こちらに笑いかけているのを感じる。 いけない。 あなた見るんじゃありません」 突然、三谷は叫んで、写真を裏返しにしてしまった。 やっと彼はその写真の怖ろしい意味を、 悟 ( さと )ることが出来たのだ。 だが、もう遅かった。 「マア、やっぱり、そうですの?」 倭文子は真青な顔だ。 「そうなのです。 ……あいつは何という醜悪な怪物だろう?」 写真の中で、むごたらしく斬り殺されているのは、誰でもない、三谷と倭文子であったのだ。 思い出すと、いつか岡田と三人で、町へ散歩に出た時、写真屋を見つけて、三人一緒のや、一人ずつのや、 幾枚 ( いくまい )も写真を撮ったことがある。 その時お互に交換し合った写真に、岡田は 巧 ( たくみ )な加筆をして、無残な死体を作り上げたのだ。 洋画家の彼には、そんなことは何でもない仕事である。 流石 ( さすが )に、 一寸 ( ちょっと )した加筆で、 相好 ( そうごう )がまるで変り、ゾッとする様な死相が現われている。 二人が自分の姿と気附かなかったのも無理ではない。 岡田はどこにいるかと聞くと、一寸東京へといって、荷物などはそのまま残し、急いで出発したということであった。 時計を見れば、さい前岡田が立去ってから、夢の内に二時間程もたっていた。 アア、何という不吉な 置土産 ( おきみやげ )だ。 余りにも念入りなこの悪戯が、何か恐ろしい出来事の前ぶれでなければよいが。 恋人達のこの不吉な予感は、不幸にして、間もなく適中する時が来た。 全く想像さえしなかった恐ろしい事件が起った。 岡田道彦が怪写真を残して立去ってから、半月ほどたったある日(彼はその間一度も鹽原へ帰って来なかった)三谷や倭文子の泊っている同じ宿へ、世にも奇怪な一人物が投宿した。 椿事 ( ちんじ )というのは、まるでその人物が悪魔の つかわしめででもあった様に、彼が宿についた丁度その日に突発したのだ。 偶然の一致には相違ない。 だが、何かしら異様な因縁を感じないではいられぬ。 その人物は、 後々 ( のちのち )まで、この物語に重大な関係を持っているので、ここにやや詳しくその 風 ( ふうぼう )を 記 ( しる )しておく必要がある。 紅葉 ( もみじ )が色づき始め、 遊山客 ( ゆさんきゃく )も 日毎 ( ひごと )にふえて行く季節なのに、その日は、しょぼしょぼ雨が降っていたせいもあるが、 魔日 ( まひ )とでもいうのか、鹽の湯A館には、妙に客の少い日であった。 夕方になって、やっと一台、貸切自動車が玄関に横づけになった。 中から、一寸見たのでは、六十歳以上の、ヨボヨボの爺さんが、運転手の腕にすがって降りて来た。 「なるべく近所に客のない部屋へね」 老人はフガフガと鼻へ抜ける、不明瞭な声で、ぶっきら棒にいって、 敷台 ( しきだい )を上った。 ひどく足が悪いらしく廊下の上でも、ステッキを離さない。 びっこで、 鼻 ( はな ) くたの、薄気味悪いお客さまだ。 しかし、 仕立卸 ( したておろ )しの 合 ( あい )トンビを初め、服装が 仲々 ( なかなか )立派なので、少々片輪者でも、宿の者は 鄭重 ( ていちょう )に取扱った。 階下の一室へ通されると、彼は何よりも先に、何度も聞き返さなければならない、不明瞭な言葉で、こんなことをたずねた。 「姉さん、ここに柳倭文子という美しい女が泊っているかね」 お泊りですと、正直に答えると、その部屋はどこだとか、男友達の三谷青年とは、どんな風にしているかとか、フガフガと根掘り葉掘りたずねた上、倭文子達に、わしがこんなことをたずねたといってはいけない。 口止料だ、と十円 紙幣 ( しへい )を 抛 ( ほう )り出した。 「あれ何でしょう。 気味が悪いわ」 老人の食事が済んで、お 膳 ( ぜん )をさげて来た女中が、廊下の 隅 ( すみ )で、別の女中を 捕 ( とら )えて、ヒソヒソ囁いた。 「あの人、幾つ位だと思って!」 「そうね、 勿論 ( もちろん )六十 上 ( うえ )だわ」 「イイエ、それが本当は、ずっと若いらしいのよ」 「だって、あんな真白な頭をしているじゃないの?」 「エエ、だから、 猶更 ( なおさら )おかしいのよ。 あの 白髪 ( しらが )だって、本当に自分の髪だかどうだか。 それから色 眼鏡 ( めがね )で目を隠しているでしょう。 部屋の中でもマスクをかけて、口の 辺 ( あたり )を隠しているでしょう」 「その上、義手と義足ね」 「そうそう、左の手と右の足が、自分のではないのよ。 ご飯をたべるのだって、それや不自由なの」 「あのマスク、ご飯の時には取ったでしょう」 「エエ、取ったわ。 マア、あたし、ゾーッとしてしまった。 マスクの下に何があったと思って?」 「何があったの?」 相手の女中は、彼女自身ゾッとした様に、薄暗い廊下の隅を 見廻 ( みまわ )した。 「何もないの。 いきなり赤い歯ぐきと白い歯がむき出しになっているの。 つまりあの人は唇がないのよ」 変ないい方だが、その客は、半分の人間であった。 つまり身体の 二分一 ( にぶんのいち )は自分のものでないのだ。 一番目立ったのは唇だが、鼻も 醜 ( みにく )く欠けて、直接赤い鼻孔の内部が見えているし、 眉毛 ( まゆげ )が痕跡さえなく、もっと不気味なのは、上下の 眼瞼 ( まぶた )に一本も 睫毛 ( まつげ )がないことである。 女中が頭の白髪も 鬘 ( かつら )ではないかと疑ったとは 尤 ( もっと )もだ。 その外、左手が義手で、右足が義足、身体中で満足な部分といったら、胴体ばかりの人間だ。 この怪人物は入浴を勧められた時には、 風 ( かぜ )を引いているからと断った癖に、女中が行ってしまうと、ステツキと義足で、板の間をコトンコトンいわせながら、長い階段を、谷底の浴場の方へ降りて行った。 慣れているせいか、存外 危 ( あやう )げもなく、 巧 ( たくみ )に身体の調子を取って、サッサと降りて行く。 階段を降り切ると、恐ろしい音を立てて流れている、鹿股川の岸辺に出る。 そこに、 半 ( なかば )自然の岩石で出来た、陰気な浴室が建っているのだ。 入浴するのかと思うと、そうではなく、彼は廊下から庭へ出て、浴室の外から、ガラス窓越しに、ソッと内部を覗き込んだ。 煙る 細雨 ( さいう )、それにもう夕暮れ近い刻限 故 ( ゆえ )、湯気の立ちこめた浴場内は、夢の中の景色のように、薄暗くぼやけて見える。 そこに 蠢 ( うごめ )いている二つの白いもの。 三谷青年のたくましい筋肉と、倭文子の滑かな肌。 蛭田はこの二人の様子を、それとなく見る 為 ( ため )に、降りて来たのだ。 彼等が入浴中であることは、女中の言葉で分っていた。 いくら温泉場の浴場でも、男女の別はあったのだが、入浴客が一人もなく、ガランと薄暗い、谷底みたいな浴室を、倭文子がひどく怖がるので、三谷青年の方から女湯へ這入って行ったのだ。 薄暗いのと、湯気の為に、一 間 ( けん )と離れぬ相手の白い身体さえ、はっきりとは見えぬ程だから、お互に、さしておかしくも、羞しくも感じなかった。 聞えるものは、雨の為に 水嵩 ( みずかさ )を増した、谷川の音ばかり。 母屋 ( おもや )とは遠く 隔 ( へだ )たっているし、浴場の構造が、自然の岩をそのまま使ってあったりするので、 人外 ( じんがい )の境に、生れたままの男女が、たった二人、ポツンと向き合っている感じであった。 「あんなこと気にするには当りませんよ。 子供だましの悪戯ですよ」 三谷は湯の中に、大の字になっていった。 「あたし、そうは思えません。 あの人が、今でも、その辺を、影みたいにウロウロしている様な気がして」 倭文子の白い身体が、青黒い大岩の上に、絵の様に 蹲 ( うずくま )っていた。 暫くすると、青年は、ふとそれに気づいて、驚いて尋ねた。 「アア、君は何をそんなに見ているのです。 僕までゾッとするじゃありませんか。 その目はどうしたんです。 しっかりして下さい。 倭文子さん。 僕のいうことが分りますか」 三谷は、ふと、恋人が発狂したのではあるまいかと、怖くなって叫んだ。 「あたし、幻を見たのでしょうか、ホラ、あの窓から、変なものが覗いたのよ」 頓狂 ( とんきょう )な、夢を見ている様な 空 ( うつろ )の声が答えた。 三谷はギョッとしたが、 強 ( しい )て元気な調子で、 「何もいないじゃありませんか。 向うの山の紅葉が見えている 外 ( ほか )には。 君、今日はどうかして……」 といいさして、なぜかプッツリ言葉を切てしまった。 と同時に、広い浴場にこだまして、身の毛もよだつ、倭文子の悲鳴。 彼等は見たのだ。 川に面した小窓の外に、一刹那ではあったが、何とも形容出来ない恐ろしいものを見たのだ。 そのものは、フサフサした白髪を 逆立 ( さかだ )て、異様な黒眼鏡をかけ、その下に鼻はなくて、顔半面が真赤な口と、むき出しの鋭い白歯ばかりの、 嘗 ( かつ )て見たこともないけだものであった。 倭文子は余りの恐ろしさに、恥も 外聞 ( がいぶん )も忘れて、パチャンと浴槽に飛び込むと、いきなり三谷青年の裸体にしがみついた。 底の見える美しい湯の中で、二匹の人魚が、ヒラヒラともつれ合った。 「逃げましょう。 早く、逃げましょうよ」 一匹の人魚が、他の人魚の首に、しっかりからみついて、口を耳にくっつける様にして、惶しく囁いた。 「怖がる事はありません。 気のせいです。 何かを見違えたのです」 三谷は、まだからみついている倭文子を、引ずる様にして、浴槽を出ると、小窓に駆けより、ガラッとそれを開いた。 「ごらんなさい。 何にもいやしない。 僕等は余り神経を使い過ぎているのですよ」 いわれて倭文子は、青年の肩越しに、ソッと首を伸ばして、窓の外を眺めた。 すぐ目の下を、鹿股川の青黒い水が流れている。 そこは丁度 淵 ( ふち )になった個所で、たださえ深い上に、雨降り続きの増水、しかも、夕暮れの深い谷間、その底を流れる川は、いとど物凄く見えるのだ。 と、その時、三谷青年は、彼のお尻にピッタリくっついていた倭文子の肌が、突然、ギクンと痙攣するのを感じた。 「あれ! あれ!」 彼女が凝視して叫び続ける川岸を見ると、今度こそ、いかな三谷青年も「アッ」と声を立てないではいられなかった。 最早 ( もはや )夢でも幻でもない。 最も現実的な、 棄 ( すて )ては置けぬ大椿事だ。 「水死人だ。 怖がることはありません。 助かる見込みがあるかどうか、見て来ますから、待っていらっしゃい」 脱衣場で、手早く着物を着て、廊下から現場へ飛び出すと、倭文子も彼のあとから、 伊達巻 ( だてまき )一つで従って来た。 「アア、 迚 ( とて )も駄目だ。 飛込んだのは今日じゃありませんよ」 如何 ( いか )にも、水死人は、まるで 角力取 ( すもうと )りみたいに、醜くふくれ上っていた。 顔は下を向いているので分らぬけれど、服装の様子では湯治客らしい。 「アラ、この着物、見覚がありますわ。 あなたもきっと……」 倭文子は激情に声を震わせて、妙なことを口走った。 土左衛門 ( どざえもん )は、 細 ( こまか )い 銘仙絣 ( めいせんがすり )の 単物 ( ひとえもの )を身につけていた。 その絣に見覚がある。 「まさかそんなことが」 と我が目を疑いながら、併し、三谷はその水死人の顔を確めるまでは安心が出来なかった。 彼は 水際 ( みずぎわ )まで降りて行って、岸に漂いついている死体を、 怖々 ( こわごわ )足でグッと押して見た。 すると、死体は、戸板返しの様に、クルッと廻転して、上向きになった。 まだ生きているのではないかと、ゾッとした程、軽々と向きを換た。 倭文子は遠くへ逃げて、水死人の顔を見る勇気はなかった。 三谷は見るには見たけれど、余りのことに胸が悪くなって、長く眺めていることは出来なかった。 死体の顔は、ブクブクとふくれ上り、まるで相好が変っていたし、その上、岩角に当ってすり向けたのか、ほとんど顔全体が、グチャグチャにくずれて、二目とは見られぬ不気味さであった。 三谷と倭文子が、宿の者を呼びに走ったのは申すまでもない。 それから起った、土左衛門騒ぎの詳細を記す必要はない。 警察は勿論裁判所からも人が来た。 騒ぎは鹽の湯ばかりでなく、鹽原全体に拡がり、二三日というもの、よると触るとその 噂 ( うわさ )であった。 水死人は、顔はくずれていても、年配、体格、着衣、持物等から、岡田道彦に相違ないことが確められた。 取調べの結果入水自殺であることも判明した。 川上には幾つも名高い滝がある。 岡田はそのどれかの 滝壺 ( たきつぼ )へ飛込んで、自殺をとげたのだ。 医師の推定では、死後十日以上というのだから、恐らく、彼が東京へ行くといって宿を出たその日に、身投げをしたのが、滝壺に沈んでいて、雨続きの増水の為に、やっとその日、宿の裏まで流れついたものであろう。 自殺の原因については、結局ハッキリしたことは分らぬままに済んでしまった。 失恋らしいという噂は立った。 その相手は柳倭文子であろうという者もあった。 だが、誰も本当のことは知らなかった。 知っているのは当の倭文子と三谷青年ばかりだ。 岡田は鹽原へ来て初めて倭文子を知ったのではないらしい。 彼の恋はもっともっと根強く深いものであった。 温泉へ来たのも、湯治ではなくて、ただ倭文子に接近したさであったかも知れない。 彼がどんなに悩んでいたかは、あの気違いめいた毒薬決闘を提案したのでも分るのだ。 思いが深く、悩みがひどかった 丈 ( だ )けに、絶望が彼を半狂乱にしたのは無理ではない。 だが、彼は短刀をふところにしながら、それを使用する勇気はなかった。 結局弱者の道を選んで、自分自身を 亡 ( ほろ )ぼす外に、何の手だてもなかったのだ。 水死人騒ぎの翌日、三谷青年と柳倭文子とは、このいまわしい土地をあとにして、東京へと汽車に乗った。 彼等は少しも知らなかったけれど、同じ列車の別の箱に、合トンビの襟を立て、 鳥打帽 ( とりうちぼう )をまぶかに、黒眼鏡とマスクで顔を隠した老人が乗合わせていた。 唇のない男! 蛭田嶺蔵だ。 アアこの怪人物は、三谷と倭文子に対して、 抑 ( そも )そも如何なる 因縁 ( いんねん )を持っていたのであろうか。 さて読者諸君、以上は物語の謂わばプロローグである。 これから舞台は東京に移る。 そして世にも奇怪なる犯罪事件の幕が、 愈々 ( いよいよ )開かれることになるのだ。 三谷と倭文子は、東京へ帰ってからも、三日に一度は、場所を打合わせて置いて、楽しい 逢 ( お )う 瀬 ( せ )を続けていた。 三谷の方は、学校を出てまだ勤め口も極まらず、親の仕送りで暮している下宿住いであったし、倭文子の方は何か打あけにくい事情があるらしく、住所さえ 曖昧 ( あいまい )にしているので、お互に訪ね合うことはさし控えた。 だが、二人の情熱は、時がたつに従って、衰えるどころか、愈々 濃 ( こまや )かになって行ったので、そうした曖昧な状態を、いつまでも続けることは出来なかった。 「倭文子さん、僕はもう 罪人 ( つみびと )の様な密会に 堪 ( た )えられなくなった。 君の境遇をハッキリさせて下さい。 例の畑柳未亡人というのは、一体何のことです」 三谷はある日、鹽原以来幾度も繰返した質問を、今日こそはという意気込みで持出した。 「畑柳未亡人」というのは、死んだ岡田道彦が、ふと口を 辷 ( すべ )らした、倭文子のもう一つの名前なのだ。 「あたし、どうしてこんなに臆病なのでしょう。 きっと、あなたに見捨てられるのが、怖いからだわ」 倭文子は冗談らしく笑って見せたが、どこか涙ぐんでいる様な調子であった。 「君の前身が何であろうと、そんなことで、僕の気持は変りやしない。 それよりも、今の状態では、僕は君のおもちゃにされている様な気がするのだ」 「マア」 倭文子は哀しい溜息をついて、暫く押し黙っていたが、突然、妙な やけくそみたいな調子になって、ぶっきら棒にいった。 「あたし、未亡人なのよ」 「そんなことは、とっくに想像している」 「それから、百万長者なのよ」 「……」 「それから、六つになる子供があるのよ」 「…………」 「ホラね、いやあな気持になったでしょう」 三谷青年は、何をいっていいのかわからない様子で、黙り込んでいた。 「あたし、みんないってしまいますわ。 聞いて下さる。 アア、いっそのこと、今からすぐ、あたしのうちへいらっしゃらない? そして、あたしの可愛い坊やを見て下さらない? それがいいわ、それがいいわ」 倭文子は、異様な 昂奮 ( こうふん )に上気した 頬 ( ほお )を、流れる涙も意識しないで、フラフラと立上ると、青年の意向を確めもせず、いきなり柱の 呼鈴 ( ベル )を押した。 間もなく、二人は何が何だか分らない、気違いめいた気持で、自動車のクッションに 膝 ( ひざ )を並べていた。 三谷は「そんなことで、僕の心が変るものですか」といわぬばかりに、じっと倭文子の手を握りしめていた。 二人とも一言も口を利かなかった。 だが、頭の中では、錯雑した想念のアラベスクが、 風車 ( かざぐるま )の様に廻転していた。 三十分程で、車は目的地に到着した。 降り立った二人の前に、広い 石畳 ( いしだたみ )と、 御影石 ( みかげいし )の門柱と、締め切った 透 ( す )かし模様の鉄扉と、打続くコンクリート 塀 ( べい )があった。 門柱の表札には、 案 ( あん )の 定 ( じょう )「畑柳」と記されていた。 通されたのは、落ついた、併し非常に 贅沢 ( ぜいたく )な飾りつけの、広い洋風客間であった。 大きな 肘掛椅子 ( ひじかけいす )の掛け心地は悪くなかった。 三谷の椅子の真向うに、深々とした長椅子があって、派手な模様の 天鵞絨 ( びろうど )クッションを背に、丸い肘掛へ、グッタリと 凭 ( もた )れかかった倭文子の、匂わしき姿があった。 倭文子の膝に肘をついて、長椅子の上に足をなげ出している、可愛らしい洋装の少年は、畑柳氏の忘れ形見、倭文子の実子の 茂 ( しげる )ちゃんだ。 くすんだ皮の長椅子の凭れをバックにして、倭文子の白い顔、派手なクッション、茂少年の 林檎 ( りんご )の様に赤い頬。 「母と子」と題する、美しい絵の様に眺められた。 三谷は二人から目を上げて、彼等の頭の上の壁に懸っている、引伸ばし写真の額を見た。 何となく人相の悪い四十恰好の男だ。 「死んだ畑柳ですの。 こんなもの懸けて置いて、いけませんでしたわね」 倭文子は神妙に 詫言 ( わびごと )をした。 「それから、茂ちゃんも。 この子も畑柳と同じ様に、あなたには、お目ざわりでしょうか」 「イイエ、決して。 こんな可愛い茂ちゃんを誰が嫌うものですか。 それにあなたに生写しなんだもの。 茂ちゃんの方でも、 小父 ( おじ )さん好きでしょう。 ね、そうでしょう」 そういって、三谷が少年の手を取ると、茂はニッコリ笑って、 肯 ( うなず )いて見せた。 窓の外には、ここの庭にも紅葉は色づいていたし、 常緑木 ( ときわぎ )の茂みに、うらうらと暖かい日ざしが照りはえて、ほの白く、うら悲しく、夢見心地の一ときであった。 倭文子は、茂少年の頬を 愛撫 ( あいぶ )しながら、突然、彼女の身の上話を始めたが、周囲の情景がそんな風であったから、それさえも、何かしら、 妖 ( あや )しき物語めいて聞こえたのである。 だが、彼女の身の上話を、そのままここに写すのは、余りに退屈なことだから、この物語に関係ある部分丈けを、 極 ( ごく )かいつまんで、記して置くに 止 ( とど )めよう。 十八歳の倭文子は、両親を失い、遠い縁者に養われる身であった故か、金銭と、金銭によって 贖 ( あがな )い得る栄誉とに、珍らしい程、 烈 ( はげ )しい執着を持つ娘であった。 彼女は恋をした。 だが、その恋を 弊履 ( へいり )の如く打棄て、百万長者畑柳に 嫁 ( かた )づいた。 畑柳は年も違った。 容貌も醜かった。 その上、 金儲 ( かねもう )けの為に、 法網 ( ほうもう )をくぐることばかり考えている悪者であった。 だが、倭文子は畑柳が好きだった。 彼が儲けてくれるお金は、畑柳その人よりも、もっと好きだった。 だが、悪運の強い畑柳にも、遂に報いが来た。 法網をくぐりそこねて、恐ろしい罪に問われ、獄舎の人とならねばならなかった。 倭文子と茂とは、一年余りの月日を、淋しい日蔭の身で暮す内、獄中に発病した畑柳は、遂にそこの病舎で、この世を去った。 畑柳にも、倭文子にも、遺産の分配を迫る程の親戚はなかったけれど、巨万の富と、まだ若い未亡人の美貌に引きよせられて、求婚者が次から次へと現れ、余りの 煩 ( わずら )わしさと、富を目当の求婚のおぞましさに、茂は親切な 乳母 ( うば )に任せ、たった一人で、偽名をして、 気儘 ( きまま )な湯治に出掛けたのだが。 そこで同じ宿に泊り合わせた三谷青年は、彼女の 素性 ( すじょう )を少しも知らないで、彼女に烈しい思いを寄せた。 それさえ好ましきに、あの毒薬決闘の際の、何ともいえぬ男らしい態度。 倭文子の方でも、三谷青年を思い始めたのは、決して偶然ではなかったのだ。 「あたしが、どんなに慾ばりで、多情で、いけない女だかということが、よくお分りになりまして?」 倭文子は、長い打あけ話を終って、やや上気した頬に、 棄 ( す )て 鉢 ( ばち )な微笑を浮かべていった。 「その最初の、貧乏な恋人というのはどんな人だったのです。 忘れてしまった訳ではないのでしょう」 三谷の口調には、 一寸 ( ちょっと )形容しにくい、妙な感じが含まれていた。 「あたしその人にだまされたのです。 初めはうまいことをいって、あたしを 仕合 ( しあわ )せにしてやると約束して置きながら、ちっとも仕合せになんかならなかったのです。 その人は貧しかったばかりでなく、ゾッとする様な、いやあな性質があったのです。 でも、あたしを愛してはいたのですけれど、そうされればされる程、 虫酸 ( むしず )が走る程いやでいやで仕方がなかったのです」 「その人が今どうしているか、どこにいるか、あなたは、ちっとも知らないのですね」 「エエ、八年も前の昔話ですもの。 それに、あたしまだほんの子供でしたから」 三谷は黙って立上ると、窓の所へ歩いて行って外を眺めた。 「で、つまり、これがあなたの 愛想 ( あいそ )づかしなんですか」 彼は外を眺めたまま、無表情な口調でいった。 「マア」倭文子はびっくりして、 「どうして、そんなことおっしゃいますの。 ただ、あたし、あなたにあたしの本当の境遇を隠しているのが、苦しくなったからですわ。 子供まである、獄死をした 罪人 ( ざいにん )の妻が、あなたとこうしているのが、恐ろしくなったからですわ」 「そういうことで、今更、僕達が離れられると思っているのですか」 倭文子にして見れば、離れられぬからこそ、身の上を打あけたともいえるのだ。 それが分らぬ相手ではない筈だ。 彼女も立って行って、三谷と並んで、窓の外を見た。 少し赤みがかった日光が、立木の影を長々と投げている、美しい芝生に、いつの間にか、部屋を抜け出して行った茂少年が、彼の身体の二倍程もある、愛犬のシグマと、たわむれているのが見えた。 「子供と同じ様に、あなたにも罪はないのです。 僕はそういうことで、あなたに対する心持が、変りはしない。 それよりも、僕にはあなたの富が恐ろしい。 あなたの最初の人と同じ様に、僕も貧乏な書生っぽでしかないのですから」 「マア」 倭文子は、三谷の肩に手を置いて、頬と頬とがすれ合う程も、近々と相手の顔を 視 ( み )つめながら、マアよかったといわぬばかりに、美しく美しく笑って見せた。 丁度その時、邸の塀外から、俗っぽい、 笛 ( ふえ )と 太鼓 ( たいこ )の音楽が聞えて来た。 一番早くその音に気づいたのは、シグマだ。 彼は何か不安らしく、耳を動かしてその方を眺めた。 茂少年も犬の様子に誘われて、聞き耳を立てた。 音楽が門の前あたりで止ったかと思うと、チンドン屋の 鹽辛声 ( しおからごえ )が幽かに聞え始めた。 三谷と倭文子とは、茂少年がいきなり門の方へ、駈け出して行くのを見た。 シグマも御主人のお 伴 ( とも )をして、あとになり先になり走って行った。 門の外では、珍妙な 風体 ( ふうてい )のチンドン屋が、お菓子屋の広告の、 連 ( つら )ね文句を 呶鳴 ( どな )っていた。 胸には太鼓、その上に箱があって、お菓子の見本が並んでいる。 着物は 友禅 ( ゆうぜん )メリンスを滅茶滅茶に 継 ( つ )ぎ 合 ( あ )わせた、 和洋折衷 ( わようせっちゅう )の道化服、頭には、普通の顔の倍程もある、張りぼての、おどけ人形の首丈けを、スッポリかぶって、その黒い 洞穴 ( ほらあな )みたいな口から、鹽辛声がボウボウとひびいて出る。 チンドン屋の声は、人形の首をスッポリと冠っていたせいか、やすものの蓄音器みたいに、変に鼻にかかって、 殆 ( ほとん )ど意味が分らぬ程であった。 だが、意味は 兎 ( と )も 角 ( かく )、歌の様な節廻しが面白く、その上、異様の風体の珍しさに、茂少年は、門の外へ駈け出して、思わずチンドン屋の 側 ( そば )へ寄って行った。 「坊ちゃん、ホラ、このお菓子を差上げます。 サァ、召上れ。 頬っぺたがちぎれる程、おいしくてたまらないお菓子!」 張りぼての顔を、おどけた調子で振り動かしながら、太鼓の上の見本のお菓子を差出した。 茂少年は、サンタクロースの様に、親切な 小父 ( おじ )さんだと思って、喜んでそのお菓子を受取ると、別にお腹がすいていた訳ではないが珍らしさに、 早速 ( さっそく )口へ持って行った。 「おいしいでしょ。 サア、これからこの小父さんが、太鼓叩いて、笛吹いて、飛び切り面白い歌を歌って聞かせますよ」 ヒューヒュラ、ドンドン。 頭でっかちのおどけ面が、肩の上でクルクルクル。 友禅メリンスの道化服が、ピョンピョコ、ピョンピョコ、操り人形みたいに、面白おかしく踊り出した。 踊りながら、チンドン屋は、段々畑柳邸の門前を離れて行く。 茂少年は、余りの面白さに、つい我を忘れて、まるで夢遊病者みたいに、そのあとからついて行く。 踊るチンドン屋を先頭に、可愛らしい洋服姿の茂。 そのまたあとには、小牛の様なシグマ。 いとも不思議な行列が、 淋 ( さび )しい屋敷町を、どこまでもどこまでも歩いて行った。 それとは知らぬ、客間の倭文子。 チンドン屋の音楽が、段々遠ざかって、とうとう聞えなくなってしまったのに、いつまでたっても、茂少年が帰って来ないので、ふと心配になり出した。 女中を呼んで、門前を探させて見たが、茂は勿論、愛犬のシグマさえ、どこへ行ったのか、影も形も見えぬという。 何とやら 唯 ( ただ )ならぬ感じだ。 倭文子も、三谷も、召使達も、青くなって、邸の内外隅まで探し廻ったが、どこにも姿はない。 そこへ、所用があって外出していた、 乳母 ( うば )のお 波 ( なみ )が帰って来て 申訳 ( もうしわけ )がないと泣き出す騒ぎである。 まさかチンドン屋に連れ去られたとは想像もしなかったが、こんなに探しても見つからぬ所を見ると、 若 ( も )しや人さらいの所業ではないかと、誰の考えもそこへ落る。 警察へ届けるか、イヤ、もう少し待って見ようと、ゴタゴタしている間に、時間は容赦なくたって行く。 やがて日が暮て、戸外が暗くなるにつれて、不安は 募 ( つの )るばかりだ。 果 ( はて )しも知れぬ暗闇の中を、母の名を呼びながら、さまよっている茂少年の、哀れな姿が見える様で、悲しい声が聞える様で倭文子はもう、居ても立ってもいられぬ気持である。 暫くすると、元の客間に集まって、不安な顔を見合わせていた倭文子達の所へ、一人の書生が、真青になって、惶しく駆け込んで来た。 「確かに 誘拐 ( ゆうかい )です。 シグマが帰って来ました。 こいつは坊ちゃんの為に、こんなに傷つくまで忠実に闘ったのです」 書生の指さすドアの外を見ると、小牛の様なシグマが、全身あけに染まって、悲しいうなり声を立てながら、グッタリと 横 ( よこた )わっていた。 ハッハッという、せわしい呼吸。 ダラリと垂れた舌、ともすれば白くひきつって行く眼。 数ヶ所にパックリ口を開いた、むごたらしい傷口。 倭文子は、廊下に寝そべっている、真赤なものを見た 刹那 ( せつな )、どこか遠い所で、同じ運命にあっている、いたいけな我が子の 聯想 ( れんそう )の為に、フラフラとめまいがして、倒れ 相 ( そう )になるのを、やっとこらえた。 彼女には、血みどろのシグマが、むごたらしく 喘 ( あえ )いでいるのが、いつまでたっても茂少年の、のたうち廻る姿に見えて仕方がなかった。 畑柳家には、 執事 ( しつじ )の様な役目を勤めている、 斎藤 ( さいとう )という老人がいたのだけれど、あいにく不在の為に、三谷が代って、警察へ電話を掛け、事情を告げて、茂少年の捜索を依頼した。 警察からは、係りの巡査が出向くという返事であったが、その用件をすませて、受話器を掛けるか掛けないに、またけたたましいベルが鳴った。 まだその卓上電話の前にいた三谷が、再び受話器を耳に当てて二言三言うけ答えをしている内に、彼の顔が真青になった。 「誰ですの? どこからですの?」 倭文子が心配に息をはずませて尋ねた。 三谷は送話口を手で押えて、振返ったが、ひどくいい 悪 ( に )く相に躊躇している。 「何か心配なことですの? 構いません、早くおっしゃって下さい」 倭文子がせき立てる。 「 確 ( たしか )に聞き 覚 ( おぼえ )がある。 贋物 ( にせもの )ではありません。 あなたのお子さんが、自身で電話口に出ていらっしゃるのです。 だが……」 「エ、何ですって? 茂が電話口へ? あの子はまだ電話のかけ方もよく知りませんのに。 ……でも聞いて見ますわ、あの子の声は、あたしが一番よく知っているのです」 倭文子は駆け寄って、まだ躊躇している三谷の手から、受話器を奪い取った。 「エエ、あたし、聞こえて? 母さまよ。 お前茂ちゃんなの? どこにいるの?」 「ボク、ドコダカ、ワカラナイノ。 ワカラナイシ、ヨソノオジサンガ、ソバニイテ、コワイカオシテ、ナニモイッテハ……」 バッタリ声が切れた。 突然、その怖い小父さんが、少年の口を手で 塞 ( ふさ )いだらしい様子だ。 「マア、本当に茂ちゃんだわ。 茂ちゃん。 茂ちゃん。 サア、早くお話し母さまよ。 あたし、お前の母さまよ」 辛抱 ( しんぼう )強く声をかけていると、暫くして、また茂のたどたどしい声が聞えて来た。 「カアサマ、ボクヲ、カイモドシテクダサイ。 ボクハ、アサッテ、ヨルノ十二ジニ、ウエノコウエンノ、トショカンノウラニ、イマス」 「マア、お前、何をいっているの、お前の側に悪者がいて、お前にそんなことを 喋 ( しゃべ )らせているのね。 茂ちゃん。 たった一言、たった一言でいいから、今いる場所をおっしゃい。 サア、どこにいるの?」 だが、少年の声は、まるで聾の様に、倭文子の言葉を無視して、子供らしくない、恐ろしいことを喋っている。 「ソコヘ、十マンエン、オサツデ、カアサマガ、モッテイラッシャレバ、ボクカエレルノ。 十マンエンオサツデ。 カアサマデナクチャ、イケナイノ」 「アア、分った分った。 茂ちゃん安心おし、きっと助けてあげるからね」 「ケイサツヘ、イイツケルト、オマエノコドモヲ、コロシテシマウゾ」 アア、何ということだ。 「お前の子供」というのは、 話 ( はなし )ている茂少年自身のことではないか。 「サア、ヘンジヲシロ。 ヘンジヲシナイト、コノコドモガ、イタイメニアウゾ」 その言葉が切れるか切れないに、ワーッという、悲しい子供の泣き声が聞えた。 何という残忍酷薄の 所業 ( しわざ )であろう。 少年少女を誘拐して、その身代金を強要する犯罪はしばしば聞く所であるが、誘拐した少年自身に脅迫の文句を喋らせ、その悲痛な泣き声を聞かせ、母親の心をえぐらんとするに至っては、かつて前例のない悪魔の 奸 ( かん )手段である。 だが、倭文子にしては、悪魔の所業を 悪 ( にく )むよりは、電話口でゾッとする様な、脅迫の文句を喋っている、茂少年の、何ともいえぬ恐ろしい境遇に、気も心も 顛動 ( てんどう )して、何を考える余裕もなく、電話器にしがみついて、相手の声を失うまいと、半狂乱の 体 ( てい )であった。 「茂ちゃん。 泣くんじゃありません。 母さまはね、お前のいうことなら、何でも聞いて上げます。 お金なんぞ惜くはありません。 承知しました。 エエ承知しましたと、そこにいる人にいっておくれ、その代り茂ちゃんは、きっと、間違いなく、返して下さいって」 それに答えて、受話器からは、まるで無感動な、 暗誦 ( あんしょう )でもする様な、たどたどしい子供の声が聞こえて来た。 「コチラハ、マチガイナイ。 オマエノホウデ、サッキノコトヲ、一ツデモタガエタラ、シゲルヲ、コロシテシマウゾ」 そして、カチャンと、電話が切れてしまった。 いくら六歳の幼児でも、彼のいっている文句が、どんな恐ろしいことだかは、分っていたに相違ない。 それをあの無感動な調子で喋らせた、悪魔の脅迫が、どんなに 烈 ( はげ )しいものであったか。 思うだに身の毛がよだつ。 三谷を初め、乳母のお波、女中などが電話の前に泣き 伏 ( ふし )た倭文子を、 慰 ( なぐさ )めている所へ、やがて、所管の 麹町 ( こうじまち )警察から、司法主任の警部補が、一名の私服を伴って、訪ねて来た。 「よくある手ですよ、ナアニ、お金なんか用意する必要はありません、新聞紙包か何かを持って、 兎 ( と )も 角 ( かく )もその約束の場所へ行って見るのですね。 そして子供と引換てしまうのです。 あとは警察の方で、うまくやります。 無論犯人を 引括 ( ひっくく )るのです。 ただ、最初から我々が行ったのでは、犯人の方で用心して、逃げてしまいますから、あなたが、先方の申出を守って、警察の力を借りず、単独でお金を持参した様に見せかけるのですよ。 僕はいつかも、この手で犯人をおびき寄せて、うまく逮捕した経験があるのです」 司法主任は、事もなげにいってのけた。 「しかし、犯人はその場で、お金を 検 ( しら )べて見るでしょうから、若し贋物と分ったら、子供に手荒らな真似をする様なことはないでしょうか」 三谷が不安そうに尋ねると、警官は笑って見せて、 「我々がついています。 現場附近に数名の巡査を伏せて置いて、万一の場合は、八方から飛出して、有無をいわせず引括ってしまいます。 それに、犯人にとって、子供は大切な商品なのですから、 仮令 ( たとえ )この計画が失敗しても、危害を加える様なことは、決してありません。 一体、身代金請求なんて一時代前の古くさい犯罪で、今時、こんな真似をする奴は、よっぽど間抜けな 賊 ( ぞく )ですよ。 それに、従来この手で成功した例は、 殆 ( ほとん )どないといってもよい位です」 結局、当夜は、 予 ( あらかじ )め現場附近の森蔭に七八名の私服刑事を、潜伏させて置いて、表面上は倭文子が単身、茂少年を受取りに出向くということに、相談が一決したが、三谷は倭文子の身の上を気遣う余り、更に 奇抜 ( きばつ )な一案を提出した。 「倭文子さん、僕にあなたの着物を貸て下さい。 あなたに化けて、僕が行きましょう。 僕は学生芝居の 女形 ( おやま )を勤めた経験がある。 鬘だって訳なく手に入ります。 真暗な森の中です、大丈夫ごまかせますよ。 それに、僕が行きさえすれば、腕ずくだって、茂ちゃんを取戻して来ます。 そうさせて下さい。 あなたをやるのは、どうも危険な気がします」 それ程にしなくてもと、反対意見も出たけれど、遂に三谷の熱心な希望が 容 ( い )れられ、彼が倭文子の身替りを勤めることになった。 当夜、三谷は髭のない顔に念入の化粧を施し、鬘を 冠 ( かぶ )り、倭文子の着物を着て、学生芝居以来久しぶりの女装をした。 彼はこの奇妙な冒険に勇み立ち、女装そのものにも、少からぬ興味を感じているらしく見えた。 自 ( みずか )ら提案した程あって、彼の女装は、本当の女としか思われぬ程、よく出来た。 「きっと茂ちゃんを連れて帰ります。 安心して待ってて下さい」 彼は出発する時、そういって倭文子を慰めたが、その時、双方とも女の姿で、顔を見合わせたのが、 暫 ( しばら )くの別れになろうとは、誰が予知し得たろう。 女装の三谷が、 山下 ( やました )で自動車を降りて、 山内 ( さんない )を通り抜け、図書館裏の暗闇にたどりついたのは、丁度約束の十二時少し前であった。 交番もそんなに遠くはなく、 桜木町 ( さくらぎちょう )の住宅街もついそこに見えているのだけれど、その一角は妙に真暗で、まるで深い森の中へでも這入った様な気持だ。 刑事達は、どこに潜伏しているのか、 流石 ( さすが )商売柄、それと知っている三谷にも、気配さえ感じられぬ。 四方に気を配りながら、暫く 暗 ( やみ )の中に立っていると、カサコソと草を踏む音がして、ボンヤリと黒く見える、大小二つの影が近づいて来た。 小さい方は確かに子供だ。 相手は約束をたがえず、茂を連れて来たのであろう。 「茂のお母さんかね」 黒い影が、囁き声で呼びかけた。 「エエ」 こちらも、女らしい低声で答える。 「約束のものは、忘れやしめえね」 「エエ」 「じゃ、渡してもらおう」 「アノ、そこにいるのは茂でしょうか。 茂ちゃん、こちらへいらっしゃい」 「オッと、そいつはいけねえ、例のものと引換だ。 サア、早く出しな」 段々、暗に 慣 ( な )れて来るに従って、ウッスリ相手の姿が見える。 男の服装は 半天 ( はんてん )に 股引 ( ももひき )、顔は黒布で包んでいる。 子供は可愛らしい洋服姿が、 確 ( たしか )に茂だ。 少年は余程激しい 折檻 ( せっかん )を受けたと見えて、母親の姿を見ても、声さえ立てず、男に肩先を 掴 ( つか )まれたまま、小さくなっている。 「それじゃ、確に十万円、百円札が十束ですよ」 三谷は、 嵩 ( かさ )ばった新聞包を差出した。 それにしても、余りの 金高 ( かねだか )である。 いくら可愛い子供の為とはいえ、 易々 ( やすやす )と渡すのは、少し変だ。 相手の男が果して信用して受取るであろうか。 だが、賊の方でも、いくらか血迷っていたと見え、包を受取ると、別段検べもせず、子供をつき放して置いて、いきなり暗の中へ逃げ出した。 「茂ちゃん。 小父さんですよ。 母さまの代りに、君を迎えに来た、小父さんですよ」 三谷が、少年を引寄せて、そんなことを囁いていた時、賊の逃げた方角に当って、異様な叫び声と共に、何かが木の幹にドシンドシンとぶつかる音がした。 「捕えた。 賊は捕えたぞ」 木蔭に忍んでいた刑事の一人が難なく曲者をとらえたのだ。 四方に起る「ワッ」という様な声、人の走る足音。 刑事の伏勢が、全部その方へ 馳 ( は )せ集った。 余りにあっけない捕物であった。 刑事の一団は、賊の 繩尻 ( なわじり )をとって、その顔を見る為に、少し離れた所に立っている常夜燈の真下へ連れて行った。 三谷も少年の手を引いて、そのあとからついて行ったが、明るい電燈の光で、少年の顔を一目見ると、彼はなぜか「アッ」と異様な叫声を発した。 読者諸君が想像された如く、三谷が取戻した少年は、茂とは似ても似つかぬ贋物であった。 茂の洋服を着た、見も知らぬ子供であった。 だが、仮令茂が贋物でも、賊の本人が捕えられているのだ。 子供はいつでも取戻せる。 三谷は見知らぬ少年を引連れて、賊を取巻く刑事の一団に近寄って行った。 ところが、これはどうしたのだ。 そこにもまた、実に変てこなことが起っていたではないか。 「ヘエ、わしは、そんな悪いこととは知らねえで、十円の金に目がくれて、そいつのいいつけ通りやったまでです。 わしは、何も知らねえ者です」 男は、覆面をとって、しきりと 詫言 ( わびごと )を並べていた。 「僕はこいつを知っている。 この山内に野宿している 新米 ( しんまい )の子持ち乞食だ。 あの洋服を着せられているのは、こいつの子供なんだよ」 一人の刑事が、男の言葉を裏書した。 「それで、貴様が贋の子供と引換えに、金を受取ると、どっかに待受けている、その頼んだ男の所へ、持って行く約束なんだな」 別の刑事が、乞食を睨みつけて呶鳴った。 「インヤ、金を受取れなんて、いやしねえ。 ただ、女の人が四角な包を持って来るから、それをもらって、どっかへ捨っちまえ、といったばかりで」 「ホウ、そいつは妙だね。 すると、賊の方では、金包が新聞紙だということを、チャンと知っていたんだな」 何だか狐につつまれた様な、変な具合だ。 「そいつの顔を覚えているだろう。 どんな奴だった」 また一人の刑事が尋ねた。 「それが分らねえです。 大きな黒眼鏡をかけて、マスクをつけて、その上外套の袖を顔へ当てて、物をいっていたんで……」 アア、この風体! 読者は恐らく、ある人物を思い出されたことであろう。 「フン、合トンビを着ていたのか」 「ヘエ、新しい上等の奴を着て居りました」 「年配は?」 「ハッキリ分らねえが、六十位の 爺 ( じい )さんでがした」 刑事達は、この子持ち乞食を、一応警察署に同行して、なおきびしく取調べたが、 上野 ( うえの )公園で聞き取った以上のことは何も分らなかった。 態々 ( わざわざ )女装までして、ノコノコ出かけて行った三谷は、実に間の悪い思いをしなければならなかった。 彼はそこそこに、刑事達に挨拶をして置いて、通りがかりのタクシーの中へ逃げ込んで、畑柳家に引返した。 帰って見ると、更に驚くべき事件が、彼を待受けていた。 「奥さんは、さい前、あなたからのお手紙でお出掛けになりました」 という書生の言葉だ。 「手紙? 僕はそんなもの書いた覚えはないが、その手紙が残っていたら見せて下さい」 三谷は烈しい不安の為に、胸をワクワクさせて、叫んだ。 書生が探し出して来た手紙というのは、何の目印もない、ありふれた封筒、ありふれた用紙、それに巧みに三谷の筆蹟を真似て、こんなことが書いてあった。 上野、 北川 ( きたがわ )病院にて、三谷。 それを読むと、三谷は真青になって、いきなり玄関脇の電話室に飛込み、惶しく警察署を呼び出した。 手紙にある北川というのは、実在の病院だが、倭文子がそこへ行っていないのは、分り切つている。 では、可哀相な彼女は今頃は、どこで、どの様な恐ろしい目に合っていることであろう。 倭文子は、贋手紙に驚いて、無我夢中であったから、彼女の乗った自動車が、どこをどう走っているのか、少しも気づかなかったが、車が止って、降りて見ると、そこは全く見覚えのない、非常に淋しい町で、病院らしい建物は、どこにもなかった。 「運転手さん、ここは場所が違うのじゃありませんか。 病院って、どれなんですの」 倭文子が驚いて尋ねた時には、既に、運転手と助手とが、両側に降り立って、彼女の腕を掴んでいた。 「病院っていうのは、何かの間違いでしょう。 坊ちゃんはこの家にいらっしゃるのですよ」 運転手は、平気で、見えすいた嘘をいいながら、グングン倭文子を引張って行った。 小さな門を這入って、真暗な格子戸を開けると、玄関の式台らしい所へ上った。 燈火 ( ともしび )のない部屋を二つ三つ通り過ぎ、妙な階段を下った所に、ジメジメと土臭い小部屋があった。 小さなカンテラがついているばかりで、よく分らぬけれど、柱も何もないコンクリートの壁、赤茶けた 薄縁 ( うすべり )、どうやら地底の 牢獄 ( ろうごく )といった感じである。 声を立てて助けを求めるという様なことを、考える 隙 ( ひま )もない程、 咄嗟 ( とっさ )の出来事であった。 「茂ちゃんは? あたしの子供はどこにいるのです」 倭文子は、だまされたと感づいていながらも、まだあきらめ切れず、甲斐なきことを口走った。 「坊ちゃんには、じき会わせて上げますよ。 暫く静かにして、待っておいでなさい」 運転手達は、 傲慢 ( ごうまん )な調子で、いい捨てたまま、部屋を出て行ってしまった、ガラガラと閉める 頑丈 ( がんじょう )な扉、カチカチと鍵のかかる音。 「マア、あなた方は、あたしを、どうしようというのです」 倭文子は叫びながら、扉の所へ駈け寄ったが、もう遅かった。 押しても叩いても、厚い板戸はビクともしない。 かたい、冷い薄縁の上に、くずおれて、じっとしていると、ひしひしと迫る夜気、地底の穴蔵の、墓場の様な、 名状 ( めいじょう )し 難 ( がた )き静けさ。 倭文子は気が落ちつくに従って、我身の恐ろしい境遇が、ハッキリと分って来た。 茂のことで、心が一杯になっていて、我身の危険を 顧 ( かえり )みる 暇 ( いとま )がなかったとはいえ、どうして、こうも易々と、こんな所へ連れ込まれたのかと、寧ろ不思議な感じがした。 ふと気がついて、耳をすますと、どこか上の方から、子供の泣声が聞えて来る。 深々 ( しんしん )と静まり返った夜の中に、細々と絶えては続く、淋しい泣声。 幼い子供が、折檻されている様子だ。 いとし子の声を、なんで聞違えるものか。 あれは確に、茂の泣声だ。 そうでなくて、こんなにも、ヒシヒシと胸にこたえる筈がない。 「茂ちゃん。 お前、茂ちゃんですね」 倭文子は、 耐 ( たま )らなくなって、思わず高い声で叫んだ。 「茂ちゃん。 返事をおし。 お前の母さまは、ここにいるのよ」 恥も外聞も忘れて、気違いの様に叫び続ける声が、やっと相手に通じたのか、一刹那、泣声がパッタリ止ったかと思うと、 俄 ( にわか )に調子の高まった、身を切られる様なわめき声が響いて来た。 その調子が母さま母さまと呼んでいる様に聞える。 それに混って、ピシリピシリと異様な物音、アア、可哀相に、子供は鞭で打たれているのだ。 だが、その間に、倭文子にとって、茂の泣声よりも、もっともっと恐ろしいものが、忍びやかに、彼女の身辺に近づいていた。 運転手達の出て行った、扉の上部に小さな覗き穴が作ってあって、今、その 蓋 ( ふた )が、ソロソロ開きつつあるのだ。 痛ましい子供の泣き声が、少し静まったので、天井の方に集まっていた注意力が、解けると同時に、目についたのは、扉の表面に起っている、異様な変化であった。 倭文子はギョッとして、少しずつ、少しずつ、開いて行く、覗き穴を凝視した。 カンテラの赤茶けた光が、 僅 ( わず )かに照らし出だす扉の表面に、糸の様に黒い 隙間 ( すきま )が出来たかと思うと、それが徐々に半月形となり、遂にポツカリと、真黒な穴があいた。 誰かが覗きに来たのだ。 「茂に逢わせて下さい。 あの子を 折檻 ( せっかん )しないで下さい。 その代りに、わたし、どんなにされても構いません」 倭文子は一生懸命に叫んだ。 「本当に、どんなにされても、構わぬというのかね」 扉を 隔 ( へだ )てたせいか、ひどく不明瞭な、ボウボウという声が、答えた。 その調子が、ゾッとする程不気味に思われたので、彼女は容易に次の言葉が出なかった程だ。 「お前さんが、そんなにいうなら、茂と逢わせてやらぬでもないが、今の言葉は、まさか嘘じゃあるまいね」 やっぱり、非常に聞き取りにくい声がしたかと思うと、丸い覗き穴に、ヒョイと人の顔が現われた。 一目それを見た倭文子は、余りの怖さに、ヒーッと、泣くとも叫ぶともつかぬ声を立てて 袂 ( たもと )で目かくしをしたまま、 俯伏 ( うっぷ )してしまった。 嘗つて鹽原温泉で見た、何ともいえぬ恐ろしい幻が、またしてもそこに現われたからだ。 顔一面の引釣、赤くくずれた鼻、長い歯がむき出しになった、唇のない口、この世の中のものとも思われぬ、不気味にも醜い怪物であった。 やがて、俯伏している襟元に、スーッと冷い風を感じた。 扉が開かれたのであろう。 アア、一歩、一歩、あいつが近づいて来るのだ。 と思うと、居ても立ってもいられぬ怖さだが、逃げようにも、身体がすくんで、立上るのはおろか、顔を上げることさえ出来ぬ。 悪夢にうなされている気持だ。 倭文子は見なかったけれど、扉をあけて、はいって来たのは、黒いマント様のもので、身体ばかりでなく、顔まで隠した、異様の人物であったが、マントのふくれ具合といい、その隙間からチラチラ見える素肌といい、彼は真ぱだかの上に、直接マントだけを引かけているらしく見えた。 男は倭文子の上に、のしかかる様な格好になって、またもや不明瞭な声で、 「お前さんの言葉が、本当か 嘘 ( うそ )か、今すぐためして上げるよ」 といいながら、倭文子の背中を、軽く叩いたが、その拍子に、左の手首が、彼女の頬にさわった。 倭文子は、その手首の、瀬戸物みたいに、固くて冷い肌ざわりに、ゾッと 動悸 ( どうき )が止ってしまう様な、恐れを感じた。 「あなたは誰です。 どうして私達をこんなひどい目に合わせるのか、その訳をおっしゃい!」 倭文子は死にもの狂いの顔を上げて、上ずった声で叫んだ。 いつの間に、カンテラを吹き消したのか、部屋の中は、真の闇だ。 怪物のありかも、その異様な呼吸の音で、やっと察し得るに過ぎない。 相手は不気味に押黙っている。 闇の中に、暗よりも黒いものが、 微 ( かすか )に 蠢 ( うごめ )いて、いまわしい息遣いが、徐々に徐々に、近づいて来るのが感じられる。 やがて、頬にかかる熱い息、肩を這い廻る指の感触…… 「何をするんです」 倭文子は肩にかかる手を払いのけて立上った。 いくら怖いからといって、彼女は小娘ではないのだ。 されるがままになってはいない。 「逃げるのかね、 併 ( しか )し逃げ道はありやしないぜ。 わめいて見るかね。 だが、地の底の穴蔵だ。 誰も助けに来るものはあるまいよ」 不明瞭な声が、毒々しくいいながら、逃げる彼女に、追い迫って来た。 暗の中の、悲惨な鬼ごっこだった。 何かにつまずいて、バッタリ倒れる倭文子。 その上にのしかかって、抱きすくめようとする怪物。 お互に顔も見えぬ、暗闇の触覚の争い。 あの唇のない、赤い粘膜そのものの様な顔が、今にも彼女の頬にふれはしないかと、倭文子は、それを考えただけで、気の遠くなる程、怖かった。 「助けて、助けて」 組みしかれた彼女は、絶え絶えの声で叫んだ。 「お前、茂に逢い度くないのかね。 逢いたければ、おとなしくするがいいぜ」 だが、倭文子は抵抗をやめなかった。 おいつめられた鼠が、却って猫にはむかって行く、あのむごたらしい、死にもの狂いの力で、彼女は相手を突き倒そうとした。 それがかなわぬと知ると、あさましいことだが、ふと口に触れた相手の指先を、思い切って、グニャッと 噛 ( か )みしめたまま、放さなかった。 怪物は悲鳴を上げた。 「放せ、放せ。 こん 畜生 ( ちくしょう )、さもないと……」 丁度その時、天井の方から、またしても、茂少年の、絶え入る様な泣き声が聞こえて来た。 ピシリ、ピシリ、残酷な 鞭 ( むち )の音だ。 「打て、打て、もっと打て。 餓鬼 ( がき )が死んでも構わねえ」 不明瞭な、ゾッとする様な、呪いのわめき声が、怪物の口からほとばしった。 「分ったか。 お前が抵抗している間は、餓鬼の折檻をやめないのだ。 お前の抵抗がひどければ、ひどい程、お前の子供は、死ぬ苦しみを受けるのだぞ」 そういわれては、流石に 啣 ( くわ )えている指を、放さぬ 訳 ( わけ )には行かなかった。 そして、彼女がグッタリ抵抗力を失うと、不思議なことに、上の泣き声も静まった。 またしても、ヌメヌメと、襲いかかる怪物の触覚。 ゾッとして、身を固くして、襲いかかるのを、払いのけると、 「ワーッ」 と上る、子供の悲鳴、鞭の音。 アア分った、怪物は何かの方法で、上にいる相棒に、指図をしているのだ。 折檻させたり、やめさせたり、緩急自在に操って、倭文子を責める武器としているのだ。 抵抗すれば、間接ながら、我がいとし子を死ねとばかり、責めさいなむも同然だ。 アア、どうしたらいいのだ。 こんな残酷な責道具が、この世にまたとあろうとは思われぬ。 倭文子は、子供の様に、声を上げて泣き出してしまった。 智恵も分別も尽きたからだ。 「とうとう、参ってしまったね。 フフフフフフフ、どうせそうなるのだ。 じたばたするだけ、無駄というものだ」 耐えがたき圧迫感、耳元に響く嵐のような呼吸の音、熱い息。 …… その刹那、倭文子は、名状し難き困迷を覚えた。 今彼女の上に、のしかかっているものの体臭に、微な記憶があったからだ。 「こいつは、決して見ず知らずの人間ではない。 それどころか、いつか、非常に親しくしていたことのある男だ」 知っている人だと思うと、彼女は 猶更 ( なおさら )ゾッとした。 今にも思い出せそうで、なかなか思い出せぬのが、非常に不気味であった。 茂少年が誘拐され、倭文子が行方不明になった翌日、主人のない畑柳家に、奇妙な客が訪ねて来た。 三谷は、 一先 ( ひとま )ず下宿に引上げたし、変事を聞いてかけつけた親戚の者なども、帰ったあとで、邸内には執事の斎藤老人を初め召使ばかりであった。 警察では、無論両人の行方捜査に全力を尽していたのだけれど、何の手懸りもない、雲を掴む様な探しもののこと故、急に吉報が 齎 ( もたら )される筈もなかった。 例の呼出しの贋手紙にあった、北川病院を調べたことはいうまでもないが、予想の通り、病院はこの事件に何の関係もないことが分ったばかりだ。 奇妙な客が来たのは、その夕方のことであったが、今度の事件について、密々でお話したいことがあるというので、斎藤老人が、客間へ通して面会した。 客は、背広服を着た、これという特徴もない、三十五六歳の男で、 小川正一 ( おがわしょういち )と名乗った。 が、斎藤がせき立てる様にしても、仲々本題を切出さぬ。 つまらない世間話などを、いつまでも、繰返している。 しびれを切らして、倭文子の知人から、見舞の電話があったのをしおに、一寸中座したのが、間違いだった。 老人が客間に引返して見ると、小川と名乗った客は、影も形もないのだ。 帰ってしまったのかと、玄関番の書生に尋ねると、帰った様子がないとの答えだ。 何よりの証拠は、靴を脱いだままになっている。 まさかはだしで帰る訳もあるまい。 事件の際ではあり、何となく気になる 節 ( ふし )があったので、老人は召使一同にも命じて、部屋部屋を 隈 ( くま )なく探し廻って見た。 すると、なくなった主人の、畑柳氏の書斎であった二階の洋室のドアが内側から鍵でもかけた様に、開かなくなっていることが分った。 そんな筈はない。 変だというので、鍵を探して見たが、そのドアは別段締りをする必要もないので、鍵は室内の机の 抽斗 ( ひきだし )に入れてあったことを思い出した。 按 ( おも )うに、何者かが書斎に入って、抽斗の鍵で、内側から 締 ( しまり )をしてしまったものであろう。 鍵穴に目を当てて見ると、案の定、向側から鍵をさしたままと見え、穴がつまっていて、何も見えぬ。 「仕方がない。 庭から梯子をかけて、窓を覗いて見よう」 ということになり、一同庭に廻り、一人の書生が命を受けて、梯子をかけ、二階の窓へと昇って行った。 もうたそがれ時であったから、ガラス越しに覗いた室内は、深い霧がたちこめた様で、ハッキリ見分けるのは、仲々困難であった。 書生は、ガラスに顔をくっつけて、いつまでも覗いている。 「窓をあけて見たまえ」 下から斎藤老人が声をかけた。 「駄目ですよ。 内側から締がしてある筈です」 書生がそういって、でも、念の為めに、ガラス戸を押上げて見ると、案外にも、何の手答えもなく、スルスルと開いた。 「オヤ、変だぞ」 書生は呟きながら、窓をまたいで、室内へ姿を消した。 下から見ていると、書生の入って行った窓だけが、まるで巨大な化物の口の様に、ポッカリと黒く開いているのが、何となく不気味であった。 下の一同は、一種の予感におびえながら、耳をすまして、黙り返っていた。 暫くすると、黒く開いた窓の中から、何ともいえぬ、まるで締め殺される様な「ギャーッ」という叫声が聞えて来た。 屈強 ( くっきょう )の書生が、みじめな、 鵞鳥 ( がちょう )の鳴声の様な、悲鳴を上げたのを聞くと、室内には、どの様に恐ろしいことが起っているのかと、斎藤老人を初め、ゾッとして、梯子を昇る勇気もなかった。 「オーイ、どうしたんだア」 下から別の書生が、大声に呶鳴った。 暫くは何の返事もなかったが、やがて、化物の口の様に見える、真黒な二階の窓へ、ボーッと白く書生の顔が現われた。 彼は右手を顔の前に持って行って、近眼の様に、じっと自分の指を見ている。 なぜ、そんな馬鹿馬鹿しい真似をしているのであろう。 と思う内に、彼はいきなり、気狂いの様に、その右手を振り振り、変なことを口走った。 「血、血、血だ。 血が流れている」 「何をいっているのだ。 怪我をしたのか」 斎藤老人が、もどかし相に尋ねた。 「そうじゃありません。 誰れかが倒れているのです。 身体中ベトベトに濡れているのです。 血だらけです」 書生がしどろもどろに答えた。 「ナニ、血まみれの人間が倒れているというのか。 さっきの客ではないのか。 早く電燈をつけ給え、何をぐずぐずしているんだ」 呶鳴 ( どな )りながら、気丈な老人は、もう梯子を昇り始めていた。 書生もあとにつづいた。 女達は梯子の下に一かたまりになって、青ざめた顔を見交わしながら、押黙っていた。 老人と書生とが、窓をまたぎ越した時には、既に電燈が点じられ、室内の恐ろしい有様が、一目で分った。 故畑柳氏は、 骨董 ( こっとう )ずきで、書斎にも古い仏像などを置き並べていたが、氏の没後も、それが皆そのままになっている。 両手を拡げて立ちはだかっている、真黒な、どこの仏様ともえたいの知れぬ、奇怪な仏像の足元に、一人の洋服男が、血まみれになっていた。 確に小川と名乗る、さっきの客人だ。 半面血に染まった、断末魔の苦悶の表情。 ワイシャツの胸の夥しい血のり。 空を掴んだ指。 老人と二人の書生とは、棒立ちになったまま、暫くは口を利く力もなかったが、やがて、書生の一人が、 面妖 ( めんよう )な顔をして、呟いた。 「おかしいぞ。 犯人はどこから来て、どこへ逃げたのだろう」 室の入口のドアは、内側から鍵をかけたままである。 窓は締がしてなかったけれど、 軽業師 ( かるわざし )ででもなければ、この高い二階の窓から、出入りすることは不可能だ。 それよりも、変なのは小川と名乗る男の行動であった。 この見ず知らずの人物は、なぜ断りもなく、二階の書斎へ上って来たのか。 その上、内側から、ドアに鍵までかけて、何をしていたのか。 加害者は勿論、被害者の身元も、殺人の動機も、 一切合切 ( いっさいがっさい )不明であった。 これが、この物語の、最初の殺人事件である。 だが、何という 不得要領 ( ふとくようりょう )な、不可思議千万な殺人事件であったことか。 斎藤老人は、死体には少しも手をふれず、兎も角警察に知らせることにした。 書生の一人がドアを開て、電話室へと走った。 あとに残った二人は、庭の女中達に梯子をはずさせ、窓をしめて掛金をかけ、ドアにも外から鍵をかけて、階下に引取った。 つまり、それから暫くの間、小川の死体は、その書斎の中に、完全に密閉されていた訳である。 三十分程して、麹町警察と警視庁とから係官が出張して来た。 その人数の中に、名探偵と聞えた捜査課の恒川警部が混っているのを見ると、当局が、引続いて起った、畑柳家の怪事を、 可成 ( かなり )重大に考えていることが分った。 警官達は、斎藤老人から、大体の事情を聞取ると、兎も角 現場 ( げんじょう )を検分することにして、老人の案内で、二階の書斎へと上って行った。 「部屋の中は、少しも乱さぬよう、十分注意を致しました。 死骸は勿論、何一品動かしたものはござりません。 私共は、むごたらしい死骸を一目見たばかりで、逃げ出してしまった様な訳で」 老人はそんなことをいいながら、鍵を廻してドアを開いた。 人々は 血腥 ( ちなまぐさ )い光景を想像して、ややためらいながら、部屋の中を覗いた。 電燈はつけたままになっていたので、一目で隅々まで眺めることが出来た。 「オヤ、部屋が違うのじゃないかね」 最初に踏込んだ、麹町署の司法主任が、けげんらしく呟いて、老人を振返った。 何だか、変てこな質問である。 一同妙に思って、続いて部屋の中へはいって行った。 「オヤッ」 案内者の斎藤老人までが、頓狂な叫声を発した。 さっきの死骸は、影も形もなくなっているのだ。 まさか部屋を取違える筈はない。 血みどろの男が転がっていたのは、あの黒い仏像の前であった。 外 ( ほか )の部屋にそんな仏像なんて、ないのだ。 老人は、うろたえて、窓際へ走って行って、密閉された二つの窓の掛金を検べて見たが、少しも異状はない。 全くあり得ないことが起ったのだ。 死骸は溶けてしまったか、あるいは蒸発してしまったとしか考え様がないのだ。 老人は狐につままれた様な顔をして、キョロキョロとあたりを見廻しながら、 「まさか三人が、揃って夢を見たのではありますまい。 私の外に、二人の書生が、確に死骸を目撃しておるのです」 と死体紛失が、彼の粗相ででもある様に、恐縮した。 恒川警部は、老人に、死骸の横たわっていた場所を尋ねて、そこの 絨氈 ( じゅうたん )を検べていたが、 「あなたは夢を見たのでありませんよ。 ここに確に血の流れた跡があります」 と絨氈のある個所を指さした。 絨氈の模様がドス黒いので、ちょっと見たのでは分らぬが、触って見ると、まだ指先に赤いものがついて来るのだ。 警官達は、この奇怪千万な出来事に、異常なる職業的緊張を覚え、手分けをして、室の内外を隈なく取調べたが、これという発見もなかった。 「召使を残らず集めて下さい。 何か見たものがあるかも知れない」 恒川警部の要求に応じて、召使一同、階下の客間へ呼び集められた。 書生二人、乳母のお波、女中二人。 「お 菊 ( きく )がいないが、どこへ行ったのか、誰か知らないかね」 斎藤老人が気づいて尋ねた。 小間使のお菊の姿が見えぬのだ。 「お菊さんなら、さっき、シグマがひどく鳴いているのを聞いて、犬小屋を見て来ると言って、庭へ出て行きました。 でも、それからもう大分時間がたっていますわ」 女中の一人が思い出して答えた。 シグマは先日の負傷以来、手当を加えて、庭の犬小屋につないであった。 お菊は日頃、この犬をひどく可愛がっていたので、鳴声を聞いて病犬を慰めに行ったものであろう。 斎藤老人の命を受けて、書生の一人が、お菊を探す為めに、犬小屋のある裏庭へ出て行ったが、暫くすると、何かわめきながら、客間へ駈込んで来た。 「大変です。 お菊さんが殺されています。 庭に倒れています。 早く来て下さい」 それを聞くと、警官達は驚いて、書生について裏庭へ駈つけた。 「ホラ、あすこです」 書生の指さす所を見ると、犬小屋から大分離れた、庭の芝生に、一人の女が、青白い月光に照らされて、 仰向 ( あおむき )ざまに打倒れていた。 月光に照らされて、倒れていたのは、小間使のお菊だ。 えたいの知れない殺人魔は、矢継早に、第二の犠牲者を 屠 ( ほふ )ったのであろうか。 書生は気味悪がって、たじろいでいる 暇 ( ひま )に、事に慣れた恒川警部は、いち早くお菊の側に駈け寄り、上半身を抱き起して、大声に名を呼んだ。 「大丈夫、御安心なさい。 この人はどこにも傷を受けていません。 気絶したばかりです」 恒川警部の言葉に、一同ホッとして、近々と小間使を取囲んだ。 やっと意識を取戻したお菊は、暫くあたりを見廻していたが、やがて何か思出した様子で、その青ざめた美しい顔には、何とも言えぬ恐怖の表情を浮べた。 「あれ、あすこです。 あの茂みの中から覗いていたのです」 彼女が、さも恐ろし相に、震える指先で、真暗に見える木立の蔭をさし示した時には、屈強な警官達でさえ、ゾッと、襟元に水をかけられた様な感じがした。 「誰です。 誰が覗いていたのです」 恒川氏が、せき込んで尋ねた。 「それは、あの、……アア、わたし怖くて、……」 青白い月光、真暗な木立、怪物の様な物の影。 その恐ろしい現場で今見たものの姿を話すのは、余りに怖いのだ。 「怖いことはない。 僕等はこんなに多勢いるじゃないか。 早くそれをいい給え、捜査上大切な手掛りなんだから」 恒川氏は、小川の死骸紛失と、お菊の見たものとの間に、必然的な関係がある様に思ったのだ。 せめ立てられて、お菊はやっと口を開いた。 シグマが余り鳴き立てるものだから、傷口が痛むのかと、可哀相になって、見てやる積りで、犬小屋の側へ来て見ると、流石は猛犬、痛さなどで鳴いているのではなかった。 何か怪しいものを見つけたのか、今いう木立の蔭を、遠くから睨みつけて(というのは、シグマは犬小屋に縛られていたので)勇敢に吠え立てていた。 お菊は、思わず、犬の睨みつけている茂みを、すかして見た。 すると、 「アア、わたし、思出してもゾッとします。 生れてから、一度も見たことのない様な、恐ろしいものが、そこにいたのです」 「人間だね」 「エエ、でも、人間でないかも知れません。 絵で見た骸骨の様に、長い歯が丸出しになって、鼻も唇もないのっぺらぼうで、目はまん丸に飛出しているのです」 「ハハハハハ、馬鹿なことを、君は怖い怖いと思っているものだから、幻でも見たんだろう。 そんなお化があってたまるものか」 何も知らぬ警官達は、お菊の言葉を一笑に附したが、その笑い声の終らぬ内に、またしても、シグマの恐ろしい唸り声が聞えて来た。 「ホラ、また吠えていますわ。 アア、怖い。 あいつは、まだその暗闇の中に、隠れているのではないのでしょうか」 お菊は、おびえて恒川警部にしがみついた。 「変だね、誰か念の為に、あの辺を検べて見給え」 司法主任が部下の巡査に命じた。 そして、一人の巡査が、木立の中へ踏み込んで行こうとした時である。 「ワ、ワ、ワ、ワワワワワ」 と、悲鳴とも何ともつかぬ 叫声 ( さけびごえ )がして、お菊は恒川氏の胸に顔を埋めてしまった。 彼女は再び怪物を見たのだ。 「ア、塀の上だ」 巡査の声に、一同の視線が木立の 斜向 ( ななめむこ )うの空に集まる。 いた、いた。 高いコンクリートの塀の上に、蹲って、じっとこちらを見ている怪物。 半面に月を受けて、ニヤニヤと笑っている顔は、お菊の形容した通り、正しく生きた骸骨だ。 この化物が、小川の下手人だとすれば、被害者の死体を 抱 ( かかえ )ていなければならないのに、怪物は身軽な一人ぽっちだ。 では、死体は 已 ( すで )にどこかへ隠してしまったのか。 だが、こいつは下手人であろうと、なかろうと、異様な 面体 ( めんてい )といい、 夜中 ( やちゅう )他人の邸内をさまよう曲者、取押さえない訳には行かぬ。 「コラ、待てッ」 警官達は、口々にわめきながら、塀際へと駈けつけた。 怪物はいたずら小僧が「ここまでお出で」をする様な格好で、キ、キ、と不気味な声を立てたかと思うと、塀の向側へ姿を消した。 ある者は塀をよじ昇って、ある者は門を 迂廻 ( うかい )して、恒川氏と二人の警官とが、怪物のあとを追った。 麹町の司法主任 丈 ( だ )けは、なお取調を行う為に、邸内に残った。 塀外へ出て見ると、人通りもない屋敷町の、もう一丁程向うを、黒の鳥打帽に、短い黒いマントを 飜 ( ひるがえ )して、走って行く怪物の姿が、月の光りでハッキリ分る。 読者諸君は、この怪物の左手と右足が、義手義足であることは御存知だ。 その不自由な身体で、杖もつかず、エッチラ、オッチラ、走る走る。 かつて鹽の湯温泉の長い段梯子をかけ降りた調子である。 義足だとて、使いなれると馬鹿にならぬものだ。 警官達は、 帯剣 ( たいけん )を握って走る。 もつれる影、乱れる靴音。 月下の 大捕物 ( おおとりもの )だ。 怪物は、近くの大通りへと走って行く。 まだ 宵 ( よい )の 内 ( うち )だ、賑やかな大通りへ出たら、忽ち捕まってしまうと、高を括ったのは、大きな思い違いだった。 町角を曲った所に、待ち構えていた一台の自動車、怪物の姿がその中へ消えたかと思うと、車は 矢庭 ( やにわ )に走り出した。 丁度向うから走って来る空タクシー。 恒川警部は、すかさずそれを呼び止めると、警官一同を乗込ませ、 「あの車のあとを追っかけるのだ。 賃銀は 奮発 ( ふんぱつ )するぜ」 と怒鳴った。 賑やかな大通りを、横に折れると、淋しい町、淋しい町と、曲り曲って、飛ぶ様に走る怪物の車。 残念ながら、追うものは、 撰 ( よ )りに撰ったボロ自動車。 とても相手を追い抜く力はない。 見失わぬ様について行くのはやっとである。 その上、頼みに思う交番は、怪物の方で、巧みによけて通るのだ。 神宮外苑 ( じんぐうがいえん )から、 青山 ( あおやま )墓地を通り抜けて、暫く走ると、大邸宅の高い塀ばかり続く、非常に淋しい通りで、先の車がバッタリ止まったかと思うと、いきなり飛び出す黒マント。 怪物は狭い横丁へと走り込んだ。 ソレッとばかり、警官達は車を降りて、同じ横丁へ駈け込む。 両側とも、一丈程もある高いコンクリート塀の、細い抜け道だ。 見渡す限り、一丁ばかりの間、門一つなく、一直線に塀ばかりが続いている。 「オヤ、変だぜ。 どこへ隠れたのか、影も形もありやしない」 一人の巡査が横丁へ曲るや否や、ビックリして叫んだ。 非常に変てこなことが起ったのだ。 怪物が駈け込んでから、警官達が曲り角へ達するまで、ほんの数十秒、いくら足の早い奴でも、この横丁を通り抜けてしまう時間はない。 昼の様に明るい月の光り、どこに一ヶ所、身を隠す場所とてはないのだ。 いや、もっと確なことは、今しも横丁の向うから、ブラブラこちらへ歩いて来る通行人。 近所の人と見えて、帽子も被らず着流しの散歩姿だが、その呑気らしい様子が、怪物と行違った人とは思われぬ。 「オーイ、今そちらへ走って行った奴はありませんかア」 一人の巡査が大声に尋ねると、その男は、驚いて立止ったが、 「イイエ、誰も来ません」 と答えた。 警官達は、変な顔をして、両側の高いコンクリート塀を見上げた。 何の手掛りもなく、一丈もある塀を、よじ昇ることは不可能だ。 それに、警官達は知らなかったけれど、片足義足の怪物に、そんな芸当が出来る筈はない。 どんな恐ろしい姿にもせよ、目の前に見えている内は、まだよかった。 それが白々とした月光の下で、煙の様に 消失 ( きえう )せてしまったと思うと、俄にゾッと気味が悪くなった。 妖術だ。 悪魔の妖術だ。 だが、今の世に、そんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか。 「ア、あんた、一寸待って下さい」 恒川警部は、さい前の通りがかりの人が、すれ違って行くのを呼びとめた。 彼は実に変なことを考えたのだった。 さっきの怪物が、 咄嗟 ( とっさ )の間に、風体を変えて、通行人に化けて、何気なく逃去るのではないかと思ったのだ。 「エ、何か御用ですか」 その男は、びっくりしたように振返る。 警部は無遠慮に、男の顔を覗き込んだが、無論、怪物とは似ても似つかぬ、整った容貌の青年だ。 身体の格好から、服装から、何一つ似通った所はない。 第一、その青年が怪物でない証拠には、左手右足共に完全で、義手も義足もつけていないのだ。 いやいや、もっと確な証拠がある。 というのは、恒川氏が念の為に、その男の姓名を尋ねると、彼は実に意外な答えをしたのである。 「僕ですか。 僕は三谷房夫というものです」 それを聞くと、追手に加わっていた、麹町署の巡査が、びっくりして声をかけた。 「アア、三谷さんでしたか。 あなたはこの辺にお住いなんですか」 「エエ、ついこの先の青山アパートにいるんです」 「この人なら、畑柳家の知合の人ですよ、ホラ、 先 ( せん )だって、上野公園の事件のとき、畑柳夫人に化けて、子供を取り戻しに行った、あの三谷さんです」 巡査は青年を見覚ていて、一同に紹介した。 恒川氏も三谷の名は聞いていた。 「今日も夕方まで畑柳にいて、さっき帰って食事と入浴をすませたばかりです。 それにしても、あなた方は、やっぱり畑柳の事件で……」 「そうです。 また奇妙な殺人事件があって、その犯人と覚しき怪物をここまで追いつめたのですが……」 と恒川氏は手短に仔細を語った。 「アア、その化物なら、倭文子さんが、一度鹽原温泉で姿を見たことがありますよ。 すると、あれはやっぱり幻ではなかったのだ。 今度の事件には、最初から、そいつが関係していたに違いありません」 「ホウ、そんなことがあったのですか。 それでは 猶更 ( なおさら )、あの化物を引捕えなければならん。 しかし、一体どうして消失せてしまったのか、少しも見当がつかぬのです」 「イヤ。 それについて、思い当ることがあります」 三谷は一方のコンクリート塀を見上げながら、調子を変えていった。 「この塀の向うに妙な家があるのです。 僕はよくこの辺を通るので、気をつけて見ているのですが、いつも戸が締めてあって空家かと思うと、 夜中 ( よなか )に燈火が 漏 ( も )れていたりする、実に変な家です。 人の泣き叫ぶ声を聞いたという者もある位で、近所では化物屋敷だといっているのです。 若 ( も )しや、その怪物は、どうかしてこの塀を乗り越して、今いう化物屋敷へはいったのではないでしょうか。 そこが、悪人達の 巣窟 ( そうくつ )ではありますまいか」 あとになって、考えると、この塀外で、警官達が偶然にも三谷青年に出会ったのが、悪魔の運の尽きであった。 とも角も、三谷のいった怪屋を 検 ( しら )べて見ることにして、一人の巡査を、念の為に、塀の所へ残して置いて、三谷青年を先頭に、恒川警部ともう一人の巡査とが 迂廻 ( うかい )して、その家の表口に廻った。 同じ様な門構えで、一軒立ちの、さして広くない邸が並んでいる。 怪屋というのは、その一方の 端 ( はし )にあるのだ。 門の戸は 開 ( あけ )っ放しだ。 三人はかまわず門内には 入 ( い )って、玄関の格子戸を引いて見ると、何の手答えもなく、ガラガラと開いた。 中は真暗だ。 声をかけても、誰も出て来るものはない。 なる程変な家である。 まだ宵の内とはいえ、何という不用心なことであろう。 悪人の巣窟だとすれば、なお更のことだ。 それとも、こうして開けっ放しにしておくのが、 彼奴 ( きゃつ )らの深いたくらみなのだろうか。 流石 ( さすが )に、 無暗 ( むやみ )に 踏 ( ふ )ん 込 ( こ )む訳にも行かぬので、一同玄関の土間にためらっていると、奥の方から、幽かに誰かの泣きじゃくる声が漏れて来た。 「泣いている。 子供の様だね」 恒川氏が聞き耳を立てた。 「アア、あの声は畑柳の茂さんじゃないでしょうか」 三谷がふと気づいて囁いた。 「茂? 畑柳夫人の子供ですね。 そうだ。 ここが果して犯人の住家だとすれば、その子供も、畑柳夫人も、この家のどこかにとじこめられている筈だ。 ……踏ん込んで見ましょう」 恒川警部は臨機の所置をとる決心をした。 「君は門の外へ出て、逃げ出す奴があったら、引捕えてくれ給え」 彼は傍らの巡査に命じて置いて、三谷と共に、玄関の式台を上った。 真暗な部屋部屋を、手探りで探し廻ったが、人の気配もせぬ。 二人は思い切って、手分けをして、一部屋一部屋、電燈をつけて廻ることにした。 恒川警部は、最後に、最も奥まった座敷へ踏み込んだが、どの部屋も、どの部屋も、空っぽなので、ここもどうせ空部屋であろうと、高を括って、何気なくスイッチをひねると! アッと思う間に、黒い風の様なものが、部屋を横切って、一方の廊下へ飛び出した。 「ヤ、曲者!」 警部の声に、怪しい男は、敷居をまたぎながら、ひょいと振返った。 その顔! 畑柳家の塀の上で笑っていた、あの骸骨みたいな奴だ。 唇のない男だ。 「三谷君、あいつだ。 あいつがそちらへ逃げた。 ひっとらえてくれ」 警部はわめきながら、廊下へ飛出して怪物を追駈けた。 「どこです。 どこです」 廊下の行止りの部屋から三谷の声が聞えた。 飛び出して来る人影。 恒川氏は、廊下の真中で三谷青年にぶつかった。 「あの骸骨みたいな奴だ。 君はすれ違わなかったか」 「イイエ、こちらの部屋へは誰も来ませんよ」 怪物は確に、廊下を左へ曲った。 その方角には三谷の出て来た部屋があるばかりで、両側は閉め切った雨戸と壁だ。 怪物は再び、一瞬間にして消え失せてしまったのである。 またしても悪魔の妖術だ! 二人は気違いの様に、部屋から部屋へと歩き廻った。 襖という襖は開け放され、戸棚も押入れも、人の隠れ得る場所は、便所の隅までも捜索された。 雨戸を密閉してあったので、そこから外へ逃げ出す心配はない。 逃げ出せば音がするし、掛金をはずす時間もかかるのだ。 二人は捜しあぐんで、とある部屋に突っ立ったまま暫く顔を見合わせていたが、突然三谷が顔色を変えて囁いた。 「ホラ、聞えますか。 あれはやっぱり子供の泣き声ですよ」 どこからともなく、物憂い様な泣声が、幽かに幽かに漏れて来るのだ。 二人は耳をすまし、足音を忍ばせて、泣き声をたよりに進んで行った。 「何だか台所の方らしいですね」 三谷はいいながら、その方へ歩いて行く。 だが、台所はさっき調べた時、何の異常もなかった。 電燈もその時つけたままだ。 「そんな筈はないのだが」 と恒川警部が躊躇している間に、三谷はもう台所の敷居をまたいでいた。 と同時に「アッ」というただならぬ叫び声。 恒川氏は驚いて駈けつけて見ると、三谷は、真青になって、台所の片隅を見つめたまま、立ちすくんでいた。 「どうしたんです」 と尋ねる警部の声を制して、三谷は、聞えるか聞えないかの囁き声で答える。 「あいつです。 あいつがこの上げ板を取って、縁の下へ這入って行ったのです」 台所の板の間が、炭などを入れる為の上げ蓋になっている、よくある奴だ。 警部は、勇敢に飛んで行って、その上げ板をめくって見た。 「ヤ、地下室だ」 板の下は、意外にも、コンクリートの階段になっていた。 その部分 丈 ( だ )け箱の様に、床下とは遮断されているので、怪物は外へ逃げることは出来ぬ。 地下室へ降りたに 極 ( きま )っている。 もう袋の鼠だ。 二人は、用心しながら、真暗な階段を下って行った。 先に立つ恒川氏は、帯剣の柄を握りしめている。

次の

【あそびあそばせ】青空つぐみは男?女?正体を考察してみた

青空つぐみ ネタバレ

森谷美鈴 村上遥 小林由香利 ??? ??? ??? ??? ??? ??? あらすじ 1日3分間だけ時間を止めることが出来る能力を持つ女子高生、森谷美鈴は 人と関わる事を避けたいという気持ちから生まれた能力で人間観察を楽しんでいた。 ある日、美人で誰からも好かれる村上遥のスカートの中を覗くが、村上にだけは能力が効いていないことが発覚する。 お詫びになんでもするからと約束をし、秘密を共有する仲として話すようになるが、マイペースでからかっているような村上に翻弄されていく。 主要人物 森谷美鈴(もりたに みすず) 1日3分間だけ時間を止める能力を持つ 人と関わることを苦手とし都合が悪くなると時間を止めて逃げる 村上遥(むらかみ はるか) 美人、気さく、成績優秀でクラスの中心にいる 何を考えているのか分からない 小林由香利(こばやし ゆかり) 森谷を卓球部に誘う 将来は漫画家志望 見どころ 兎にも角にもストーリーです。 思春期の他人との関わり方に翻弄されている2人に引き込まれますよ。 感想とまとめ 読み終わった後に残る余韻がアァッイイッ!! そりゃそうだ。 劇場公開するぐらいですからいい話なのは当たり前田のクラッカーなんですよ。 森谷は1日3分間時間を止める能力を持っています。 森谷がこの能力を使うときは主に都合が悪くなって逃げ出す時です。 しかしそれも他人と関わりを持たなくなり友達が作れなくなってからは人間観察に使うようになりました。 3分ってのがいいですよね。 大人になると一瞬で過ぎる時間だと思うんですが高校生の頃ってまだ時間が長く感じていた気がします。 何故3分なのか、世の中には3分という区切りを用いているものが多いのですが、どれも理由があるとのことです。 例えばウルトラマンの3分間は特撮シーンの予算がかかりすぎる為に生まれたものだとか。 森谷の場合は対人関係から逃げるために生まれた能力なので3分で十分だったのでしょうね。 それから、人が一つの話題に集中して聞けるのは3分だと言われています。 そして人間観察って人のことを知りたいという気持ちから生まれるものだと思います。 これらを考えると、今の森谷の3分間は人の話を聞いているようなものかもしれませんね。 そして、森谷と村上は正反対だけど似ている2人です。 人と関わることが苦手だけど興味津々で本質的には人が好きな森谷と、 人と関わることは得意だけど何かを愛することが出来ない村上。 どちらも不器用で素直で、好かれたいけど傷つくのは怖いという気持ちがあって 「誰も私のことなんて好きなわけない」 「フラグタイム 1巻 P. 33」より引用 「私みたいな(中略)からっぽのつまらない人間なんか愛されるわけがないのに」 「フラグタイム 2巻 P. 187」より引用 という自己否定で守っているんでしょうね。 そのため、それぞれで傷つかないための対策として、森谷は時間を止める能力を、村上は周りの顔色を伺ってイイ子を演じているんです。 これらが高校生っていう年代にバッチリなんですよね。 思春期の終わりの時期、大人まであと少しという時期ですね。 そんな時期の悩みのタネは大体対人関係ではないでしょうか? 小学校・中学校で人間関係を学習して、自分なりの人との関わり方がある程度作られた時期だと思うんですよ。 そのため個人の防衛策も持っています。 けれどまだまだ不安定で成長の余地が残されているといいますか、例えるなら肉じゃがにもカレーにもなれる段階って感じだと思うんです。 そんな時期に自分と正反対に人と関わりを作っている、防衛策を持っている存在と出会ったんですよ。 しかも美人で人気者。 そんな子にちょっかいをかけられたら揺れ動くじゃないの。 といわんばかりに森谷はグワングワンと揺れています。 何を考えているんだろう。 とか、辛いんじゃない?とか相手の思考を考えては嫌われないように必死です。 でもそれはお互い様で村上も嫌われないように必死なんです。 村上は人の期待に応え続けて育ったため、自分が分からなくなってしまっています。 お互いに分からないことだらけです。 でもお互いに誰かに好かれたい普通の人間なんです。 そんな正反対の2人が出会って、お互いが鏡のようになって自分のことを見直すことができたんですよね。 きっとカレーになったんですよ。 青春ですねぇ…! 一点蛇足ですが、小林さんの名前がアニメ公式サイトでは「由香利」って表記なんですが漫画では友達に「由佳利」って呼ばれているんですよ。 胸大きいね。 のくだりです。 これはほんのり謎でした。 村上の単語帳のひとつに「由香利」という文字は見えるのですが少し見えている苗字が「宮」っぽいんですよ。 ゆかりは2人いる…? まぁ、細けぇこたぁいいんだよ!ってところですね。 さて、濃ゆい青春味のする百合漫画です。 兎にも角にもガッツリと作り込まれたストーリーに引き込まれました。 不思議な能力はあるのですが、日常から外れない女子高生の悩みが描かれています。 そんな非日常と日常のマッチが綺麗で読み終わった後の余韻が尋常じゃない漫画でした。 アニメ化が物凄く楽しみですがどのぐらいの期間上映されるのでしょうね。 大体の映画の上映期間は1ヶ月とのことですが、2〜3週間の可能性もあるとのことです。 上映期間を逃さずに絶対見たい作品ですね!.

次の