僕ら の この 両手 が もっと もっと 救い の 手 に。 Yes I am ONE OK ROCK 歌詞情報

◈ONE OK ROCK◈ Yes I am [Lyrics]

僕ら の この 両手 が もっと もっと 救い の 手 に

一年の振り返り。 昨年のこの日は、もうトルコでの事業撤退が決まっていた。 約1年半。 大変だったし満足のいかない結果だった。 それでも今から考えると身体をこわすことはなくて 骨折はあったけど 、多分それはアドレナリンがで続けていた時間だったんだと思う。 一生懸命やった。 けどただそれだけはな成し遂げられないことがあることも改めて知った。 この会社に入って、初めて泣いた。 申し訳なさと情けなさでいっぱいだったあの日を覚えている。 お金の使い方、チームの作り方、事業の作り方、全てが未熟だったからの結果で、今から思えば甘い考え・やり方だった 人に対しても、事業に関しても と感じる。 あの時一緒にやってくれたメンバー、支えてくれた皆には今でも感謝の気持ちしかない。 ただ撤退を決めたあの日から帰国の準備をして帰ってきての今まで、どこかで物事の丸々全てをありのまま受け入れてない自分がいた気が最近した みるのを避けていた自分がいた。 周りの人たちが少しずつ結果を出し始めていることに羨ましさを感じたことがきっかけとなった。 もしかしたら自分もどうにかできたのかもしれない、そんなたらればが頭を最近過ぎった。 また、人に物事を伝える時に成功経験として伝えられないことにもどかしさを感じる。 この二つがきっかけだった。 そんな思い出に浸った日、久しぶりにトルコでの一年半を思い返した。 みんな元気でやってるのかな、よく自分と一緒にやってくれたな、俺はこのまま 成功の経験をしていない でいいんだろうか、甘かったな。 そんな色々なことを思って、そしてこの時改めて素直に自分の気持ちに触れた気もした。 触れないようにしてきた部分がそこにあった気がした。 もちろん自分が経験したことは全てこれまでも周りの人には伝えてきた。 要は自分の中の問題なのだ。 自分として「じゃあこうする」ということはまだ決めれてない。 けどいつか自分でもう一度、事業作りをしてみたいと思っている気持ちもあるのも事実。 不安もあるので手放しではないが。 今その中で自分が決めていることは 「今置かれている状況で、自分のエネルギーを燃焼しきり、そして楽しみきってみせること」 無い物ねだりをするのではなく、今を燃焼しきるその先に次のチャンスがあるはずだと信じて、今を視線をぶらさずに、納得感を持って生きていこうと思っている。 前回先輩からも今あるもの、関わるものでやってみるといいんじゃないかと言われたこともあった。 現状での成長への不安があったけど、そう言われてすっと落ちた。 確かに今関わるものの中で、燃焼してみればいいじゃないかと。 その過程とその先には、多分それまで見えなかった景色と力、いろんなものが待っている。 不安や迷いを打ち捨てて、突き進んでいきたい。 昨年と今年を思い出せば思い出すほど、改めて一緒にやってくれたメンバーへの感謝と申し訳なさ、支えてくれた方、それでもチャンスをくれ続ける方々への有り難さを感じる。 至らない自分の周りにいてくれた「温」かさを多く感じた1年だった。 来年は燃焼する。 地に足をつけて、飛躍する。 そんな来年の一文字は「燃」としたい。 ネタバレあり 晴れ・雨。 僕らには如何ともしがたいものに、確かに僕らは心を動かされる。 そういう生き物だなと思いながら、 人の心を揺り動かすものって、なんなんだろうか?どんなものなんだろうか?と少し考え込んだ。 作中でヒロインが言う 「この雨がやんでほしいって思う?」 そして深海監督の言ってた 僕たちの本当の願望って、どうしても他のたくさんの人の幸せとぶつかる場合もある。 でもそれを見ないふりをしていたり、自分には関係ないと思いこむこともかもって思うこともあるし でも、それが大切な人に起きたら。 間違えてたこと 世の中的に外れたこと でも叫ぶかもしれない そこには純粋なもの 叫び がある その純粋な叫びが批判されるのか、どうなのか。 そこを確認したい。 野田さんのコメントであった 世の中的な模範からの逸脱。 その美しさや純粋さ。 歌詞に出てくる 「他人顔」と言うことばや「自分の全正義のど真ん中」「定め」 と言う言葉。 全てが繋がっていて、最後に 天気なんて狂ったままでいいと。 「そんなことどうだっていい。 雨なんて降らなくたっていい」 と言う言葉に、大人が心を動かされ、涙を流す。 自分が泣いた意味・心が動いた理由がわかった。 僕も、探している。 これでいいだろうかって。 どこか他人顔なこの世界に対して。 僕は抗っていたいと。 そんな賢くないから、受け入れられない悲しいことをそのままにできなくて。 のたうち廻っている。 もがいている。 うまくいかない人生、それでも抗っている。 そう言うことが賢いってことなら賢くなんてならなくていいと。 自分の人生を通して証明したいものがある。 押し付けたいわけじゃないけど、でも見て見ぬ振りはしたくない。 そこに自分の信念がある。 人間という矛盾した存在には、捨てられない「感情」があって、 全てが模範とか、一般的な正しさとか論理とか、そういうもので測れるものだけじゃない側面が人間にあって、 だから、人の心はふとしたものに動かされる。 そういうものを大切にしたい。 そんな大切なことを感じさせてくれた映画。 いい映画でした。 自己と相似形となる組織について。 1、規律(公と私)、リーダーである自分と個である自分。 2、人に寄り添い、言葉で伝え続ける 3、全体設計と共有化 この三つを通して、まず描きたい。 1、規律について 当たり前のことができるチームでありたい。 仕事とはお金をもらってプロフェッショナルとして取り組むものである。 だからこそ「真剣勝負」が必要だ。 そして自走していくことが大切だ。 努力をしても成功するとは限らないが、努力なくして成功はない。 ここに真剣という姿勢がある。 そのためには、仕事へのスイッチを入れることが大切となる。 昔自分のテニスもそうだった。 心と体の準備をしっかりして入ったコートでは、やはり得るものが違った。 本気でやるからこそ得れるものがあって、楽しいはずだ。 これを求め続けたい。 そして僕に特に大切なのが、僕こそリーダーとしての自分と個人としての自分を切り分けることである。 言いづらいことなんてたくさんある。 がそれは個人としての僕だ。 だからリーダーとしての自分でそこを乗り越える。 2、人に寄り添い、言葉で伝え続ける。 相手の力量の把握と自分のサポートの定義 自分は口下手だし、自分でいっぱいいっぱいになりやすい。 つまり抱え込みやすいのだ。 これをやめるためには仕事を振り分けていくこと、そして人に寄り添うことが大切である。 人が成長すればそれだけ組織も成長する。 いくら脳が頑張っても手足がそれについてこれなければ体全体としての動きはしょぼい。 それと一緒だ。 この寄り添う中が関係性が育まれるわけだからこれを推進していくことが必要だ。 そしてこのとき大切ななのがその人の力量の把握と自分がどこをどれほどサポートしていくか?である。 2割しかできない人に丸投げしてもそれは放置と一緒である。 その上、なぜできてない?では何も変わらない。 2割しかできないのであれば8割をサポートし、その人が成長していけるようにするのが役目である。 そして、口下手である自分て、「そのくらい気づいてくれ」が多くなってしまうが、それでは伝わらない。 ことあるごとに上記の規律もセットだが伝え続けないといけない。 わかっているだろうではわからないのだ。 確認と認識の共有化をくどくしていく中で齟齬が生まれる可能性を減らしていく。 どうしてもここをはしょりがちになってしまっているがゆえにこれまでの失敗がある。 ここに僕の自己改革の道がある。 「」「準備」だ。 先輩のシートやプロジェクト管理表を使い、何が目標・成功の定義か?どういうアや手順があるか?そしてリスクと対策、及びスケジュールと学びだ。 亀だからこそしっかりコツコツと。 バカなほど愚直にやっていく。 僕だからこそやるのだ。 これまでは他者が常に僕の頭にあった。 他者・自分ではないものを意識し、それらの形に沿って自分を形成してきた。 色々な失敗・経験を経て、今年は「自分」というものをキーワードに一年を歩んで行きたいと思う。 自分の幸せ・他者の幸せ、「幸せ」というものを考えたときに、自分を大切にすること。 というのが大前提にあるように映った。 僕にはよくわからないこだわりや倫理観があった。 自分・個人の欲みたいなものをあまり美しくないものと捉える傾向があった。 けれど気づいた。 自分を滅しての、自分の幸せや他者の幸せは、あるのかもしれないけれどとてつもなく遠いものだと。 なぜならそれは時に一方的な押し付けになってしまうから。 他者のことを考えているようで最後苦しむのは自分だった。 そして彼・彼女に対しても何か嫌なものを感じてしまう自分がいた。 だからこそキーワードは「自分」。 自分を主体として考え、自分の楽しさ・自分の幸せと他者・社会をリンクさせていく。 自分の人生を振り返った時、幸せだったと言いたいし、イキイキしていたい。 かっこいい大人になっていたいし、彼のようにいきたいなと希望を与えられるような人間に慣れたら素敵だなと考えた時、「己」はとても大切なテーマとなる。 自由の裏には責任がある。 責任を真正面から受け入れるためには、自分の主体性・自由が大切となる。 出ないと責任を潔く、快く受け入れらないから。 何をするにしても、決めるのは自分。 幸せか? 楽しいか? ワクワクしているか? それを決めるのは自分だ。 他者ではないし、他者に任せるものではない。 自分で考え、決め、動くのだ。 そして僕は行動計画まで落とし込まないとやらない人間だ。 だから自分との約束事を決める。 決まっているのは、 ・一日一回の内省(楽しめたか?の確認も) ・1日一ページもしくは30分の英語だ。 言葉はコミュニケーションのツールだが、ツールと呼ぶにはあまりにも強力な力を有している。 人間関係・仕事、とてつもなく大切な資源であるからこそ、しっかりこの一年向き合う。 日本語と同水準まで持っていきたい。 結局ぶち壊せなかった時に感じる無力さが自分は一番嫌なのだから。 もちろん感謝の心を忘れない。 付き合う人・形作るチーム、それらは自分の相似形となるらしい。 だからこそ自分を深く見つめ自己改革をしっかりしていく人になる。 そして、僕は亀だから自分との約束事を誠実に守り積み重ね、一歩ずつ希望へ歩んでいきたい。 世界では今、6850万人もの人が紛争や迫害を理由に故郷を追われている。 故郷を追われながらも人々は必死に生きている。 その一人一人に物語があり、最低限の生活ができているとか最低限の権利保障がされているから良いとかそういう話ではなくて、彼ら一人一人が笑顔で生きていけるようにできたらな良いなと思う。 幸せを望み、願うという人として当たり前の欲求。 それを最近見失っていたように思う。 事業の厳しさ、感謝を望む心。 倫理観の間で。 人はそれぞれ違う環境で生きていた。 人間としての倫理観を持ちながらも、その上でより多くの幸せを希求することは別に批判することではない。 むしろ当たり前のことで祝福すべきことだ。 それを忘れてはいけない。 「世界の誰よりも輝ける、そう信じて生きてきたのは確かなんだ。 でも世界の誰もがそう輝ける、そう信じてこれから生きてゆけたらどれだけ素敵なんだろう。 」 故郷・家を追われ生きる人々の状況。 逆境に立ち向かいながらも生き抜く人の力強さ。 それを直視し、受け止めながらも、僕がやりたいのは、 「困った時はお互い様」 「僕らは助け合うながら、悲しみも喜びも分かち合いながらも一緒に生きていける」世界・その考え方の波及。 難しい・そんなの知るか、という批判色々あるけれども、 僕はそんな世界が美しいと思う。 その美しい社会の実現に向けて、動く。 「僕らのこの両手がもっともっと救いの手に変わっていって願ってみて明日の景色が動いていく」 「前だけを見続けよう」 改めて聞く のyes I amは心に響いた。 そしてこの曲を初めて聞いた栗城さんのエベレスト挑戦時のテレビ番組の、あの景色・あの自然の広大さが脳裏に鮮明に浮かんだ。 僕はその実現のために、実力も、そして人間としての倫理観・価値観をもっと磨かなくてはいけない。 頑張ろう。

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第6話 僕がどれだけ君の幸せを願っているのかなんて

僕ら の この 両手 が もっと もっと 救い の 手 に

たとえば俺のなかで競技としてのバレーが終わったとき。 そのとき、この両手はなんのためのものになるのだろうか。 いつか、いや、近い将来、来年には確実に、もしかしたらもっとはやく。 あのひとにトスを上げるのは自分の役目じゃなくなる。 それはわざわざひとつずつ確かめなくてもわかっていることだ。 とっくに知っていて、受け入れて、理解しているはずのことを、急に認めたくなくなるときがある。 それは試合中にあのひとが、俺では想像もつかないプレーをしてしまうときだったり、相手チームのセッターを見て目をかがやかせているときだったり、こうして、自分の力が及ばなくなるときだったり。 じわっと左手に押し寄せる痛みには、やらかした、と、ため息が出た。 雀田さんがすぐに持ってきてくれたアイシングを左手の薬指に当てながら、せめて折れていなければいいと考えるほどには痛かった。 結果折れてはいなかったけれど、数日はトスが上げられないことになって、たぶんすこし、ゆううつだった。 でも、木兎さんがいないから。 だれかがあのひとに上げるのを近くで見なくていい。 そのことだけが、おそらくそのとき救いだった。 「木葉さんって、なんのためにバレーやってますか?」 向かいに座って器用に手を動かしていた木葉さんは、俺の質問に怪訝そうな顔で眉を寄せた。 細い目をもっと細くして、首をかしげて、なにかを言いかけて、やめて。 めいっぱい悩むようにしてから、ゆっくりと口を開いた。 「……おまえでもそんな意味のない質問すんの?」 悩んでいた内容が質問の答えじゃないだろうことくらいはわかったが、あまりにもの返事にすこし笑う。 まあ、このひとに聞いたらそうだ。 木兎さんに聞く次に意味がなくて、自分で考えるのとさして変わらない。 ただ、動揺はしたのか、テーピングを巻いていた手がすこし乱暴に動いた。 ピリっと走った痛みに眉をひそめると、わり、と謝られる。 「……まあ、意味はないんですけど」 なんで聞いてしまったんだろうと、なんとなくはずかしくなって早急に取り消すと、木葉さんは浅く笑ってから、俺の手を放して切ってあるテープをめくる。 普段ならマネージャーに巻いてもらうのだけれど、自主練中のこの時間、雀田さんも白福さんも帰ってしまっていて、めくれたテーピングを巻きなおすのに、木葉さんが手を挙げてくれた。 自分でもできるのだが、木葉さんは手先が器用だから、あまえることにして任せている。 ぜんぶアンダーハンドでやるんで練習参加させてください。 そう言ってレシーブ練習を中心に参加していたこの数日間で、レセプションやディグがうまくなったような気がしていたところだが、今朝病院に寄って、オーバーハンドをつかう許可が出た。 まだテーピングをしっかり巻かないとすこし痛いが、はやく感覚を取り戻したい。 テーピングを巻いた状態と、しっかり治ってそれを外してからじゃ、また違ってくるのだけれど、いまの状態でマックスが出せなければ意味がない。 ちょうどおおきな大会はない時期だったが、でも、はやくしないと、木兎さんが戻ってきてしまう。 「木兎のため?」 「……俺ですか? ちがいますよ。 わかってること、わざわざ聞かないでください」 「ちがうって聞いときたかったの」 どんな顔でそう言ったのか、たしかめようと木葉さんを見たら、うつむいた顔は伸びてきた髪の陰になってよく見えなかった。 「……前髪伸びましたね」 「は? ああ、そうね。 切んなきゃな」 木葉さんはおどろいたように顔を上げて、いやそうな顔で俺を見たあと、はっ、と息といっしょに乾いた笑い声を吐き出した。 自分でも、よくわからない話題転換だったなと思う。 気になったから、ただ口に出しただけではあったけれど。 木葉さんがよし、と言って、テーピングを巻き終わった。 ありがとうございました、と礼を言うと、木葉さんは、間に合ってよかったな、と言う。 そのためじゃないと言ったのに。 そのためだけじゃない。 でも俺はたぶん、いまこの両手が、木兎さんのためにあればいいと思っている。 トスを上げられるようになってから二日後、木兎さんが戻ってきた部活は、なんだか、いつも以上にさわがしい。 「赤葦! けがしたって」 おはようございます、に応えるまえに、木兎さんはそう言って近づいてきた。 だれが言ったのだろうか、と思ったが、まあ、言っておいてもらった方が気は楽かもしれない。 「もう治りましたけど」 完治したわけではないが、それを説明する必要はない。 両手を見せて、軽く動かすと、木兎さんはなんで言ってくんなかったのと、かなしそうな顔で俺の左手にさわる。 この十日間、木兎さんからはときどき連絡が来ていて、それに返事はしていたが、けがをしたことは言わなかった。 わざわざ言うことではないと思ったから。 それに、戻ってくるころにはもっと完璧に治っている予定だった。 きゅっとにぎって、痛い? と聞く。 すこし、と言うと、しかられた犬のようにしょんぼりとする。 「そりゃおまえがにぎったら痛いだろ」 「ちゃんと大事にしろよ」 小見さんと木葉さんが近づいてきて、木兎さんを挟むと、両側から小突くようにした。 あ、そっか、と言って、木兎さんはぱっと手を放す。 ごめん、と謝るから、大丈夫です、と返した。 まだ部活もはじまっていないのに、もうしょぼくれモードみたいになっていて、思わず先輩たちをにらんでしまった。 小見さんと木葉さんは、こわいこわい、と言って逃げていく。 はあ、とひとつため息をついた。 赤葦、怒った? と、木兎さんが聞く。 そんなことでは怒らない。 ちかくにあったボールかごから、ひとつ、ボールをとった。 「ちゃんとトス、上げられますよ」 だから打ってください。 言うと、木兎さんはとびきりすきな食べものを与えられたときみたいに、うれしそうに笑った。 実際にはストレッチから、基礎練までしっかりこなして、スパイク練習の時間になってようやくトスを上げた。 順番に並んだレギュラー陣にトスを上げる。 いつもはいちばん先頭にいる木兎さんは、なぜかいちばんうしろに追いやられていた。 ドゴッと音がして、ボールは相手コートに落ちていく。 手の感覚は、万全のときとはちがうけれど、おなじボールが上げられなければいけない。 猿杙さんがボールを打って、それから俺に向けてぐっと親指を立てた。 昨日よりはだいぶいいようだ。 ふう、とひとつ息を吐く。 木兎さんが、ギラギラした目で俺を見ている。 ぞわっと背筋に走ったのは、緊張と興奮と、きっとその両方だ。 全日本のレベルで練習や試合をしてきたあとの木兎さんにトスを上げるのは、そもそも、いつも肩にすこし力が入る。 何球かは、木兎さんが不思議そうな顔で打つのを見届けなければいけない。 木兎さんに悪気があるわけではないし、単純に、俺の技術が及ばないというのもすこし違うと思う。 全日本ユースのセッターと比べられているというわけでもない。 ただ、木兎さんには木兎さんのためのトスが上がるはずだ。 どこにいても、どんなチームにいても。 だから俺のトスも、せめてそのひとつであればいい。 結局その日、部活の時間のあいだに、木兎さんが俺のトスに満足することはなかった。 とくに文句を言うわけじゃない。 顔にも、意外と出ない。 でも、おたがい、満足できていないことだけはたしかで、だから、練習後も何本もトスを上げた。 気づいたときには、体育館に木兎さんとふたりだった。 時計を見ればそろそろ最終下校の時間で、教師が見まわりに来てしまう。 つきあわせてしまっているなと思っていた。 いつもは、木兎さんにつきあって居残っているようなものだったけれど、今日は俺がつきあわせていた。 両手はすこしだけ重くて、きもちも、すこしだけ重い。 「次、ラストにしましょう」 「ん」 木兎さんは、両腕をぐるぐるまわしながらうなずいた。 山なりに投げられたボールの下に入って、トスを上げる。 木兎さんが、きれいなフォームで跳んだ。 ドンピシャだ。 力づよいスパイクが、だれもいないコートに落ちる。 だれもいないけれど、だれかがいるようだった。 ブロックも、レシーバーも、いる。 でも、だれの手にも当たらない。 一直線に、床に当たって、跳ねた。 おおきな音がする。 ピーッと、笛の音がする。 したような気がする。 この瞬間のために、バレーをしている。 いつもは木兎さんがぐずぐず着替えるのを待って、そうして部室のカギを閉めるのに、今日の木兎さんは着替えも帰り支度もはやかった。 いや、俺がもたついていただけかもしれない。 なんとなくぼーっとしてしまって、タオルで汗を拭くところからゆっくりだった。 木兎さんはなにも言わずに、座って待っていた。 部誌はまだ書いていないけれど、明日でもいいだろう。 俺が支度を終えると立ち上がって、帰るぞー、と部室を出た。 はい、とあとについていく。 部室のカギを返しそこねたけれど、職員室はおそらくもう閉まっている。 校門の横の、カギの壊れたフェンスのとびらを抜ける。 セキュリティーがどうなっているのかはわからないが、これまで何度最終下校を過ぎて帰っても、警報が鳴ったのは一度しかないから、きっと大丈夫なのだろう。 帰り道を、ふたりとも、ゆっくり歩いていた。 帰りたくないわけじゃないが、はやく帰りたいわけでもなかった。 信号待ちで、木兎さんに左手をさらわれた。 テーピングの残った手を、木兎さんはたしかめるように、ぎゅっぎゅっとにぎる。 不思議と、もう痛くはない。 「最後、すげーきもちよかった」 木兎さんが振り向いて、うれしそうに言う。 そうでしたね、と応えるくらいには、俺にとってもきもちがよかった。 十日ぶりにドンピシャのトスだったからだろうか。 でも、それだけではなかったような気もする。 「……今日、つきあわせてすみませんでした」 木兎さんが戻ってくるときには、全日本のセッターと俺のあいだにあるそもそもの力量の差以外には、違和感を残さない予定だった。 でもうまくいかなかった。 だから、時間がたくさんかかった。 きもちよかったという最後のあれを、明日またやれるかもわからない。 木兎さんは手をにぎったまま、道中にある公園へと入っていった。 街灯のすくないその公園を、こわいとは思わないけれど、夜にあまり近づきたいところではないから、ほとんど足を踏み入れたことはない。 ただ今日は月が明るくて、だから、公園は思ったほど暗くはなかった。 野球がやれそうな広場があって、その隅にベンチが並んでいる。 木兎さんがそのひとつに座って、俺も倣ってとなりに座った。 左手はまだ、木兎さんがにぎったままだ。 身体をすこし俺のほうにひねって、木兎さんは俺の右手もさらっていった。 横並びに座ったまま、向かい合うようにして、木兎さんは俺の両手を、両手の指を、いとおしそうにさわる。 「俺、おまえの手すきだよ」 おおきな目がきゅっと細められる。 本当に、ふくろうみたいだなとたまに思う。 おおきな翼を持っているひと。 その翼で、いちばん高いところに飛ぶとき、きっとそれをささえるのは俺の両手じゃない。 「……トスが上げられなくても?」 「なんで。 いつでも上げてくれるじゃん」 木兎さんが、そっと俺の手を撫ぜるようにした。 テーピングのところを、とくにていねいに。 自分の感情が動いているのはわかったけれど、どう動いているのか、よくわからなくて、うつむいてしまう。 もう痛くないから、大丈夫です。 言おうとして、言えなかった。 なんでもいいんだよ。 赤葦が俺にくれるもの、なんでもうれしい。 木兎さんの声はいつになくやさしい。 たいしたけがじゃなかった。 けがをしたのはよくなかったけれど、もう完治も近いし、さいわい大会の時期でもなかった。 スポーツにけがはつきもので、これくらいならだれにでもある。 「でも、今日は、ほとんどだめでした」 でも、チームのメンバーに迷惑をかけたし、木兎さんにも迷惑をかけた。 「……けがしたとき、俺がいなかったのがよくなかったなぁ」 痛いの痛いのとんでけー、ってできなかった。 木兎さんはおだやかに笑う。 それで治るわけじゃないことくらいはさすがにわかっているだろうに、木兎さんは俺の両手をつつみこむようにして、痛いの痛いのとんでけー、とおまじないをかけた。 もう痛くないです、とは言えなかった。 たぶん、手だけじゃなかった。 いまやっと、どこかにあった痛みがすべてなくなったような気さえした。 だから、きっと効果はあったのだろう。 「赤葦の手、すきだし、俺も大事だよ」 俺は、赤葦の両手があれば、きっとどこでもいけるよ。 「トスじゃなくてもいい。 こうやってつなぐのでもいいし、赤葦がたまに、俺にさわってくれるのも、頭なでてくれるのもすき」 だから俺と赤葦で、いっしょに大事にしようね。 木兎さんは、ほんとうにたいせつなものみたいに、俺の両手を重ね合わせて、指先にくちびるを寄せた。 「……、はい」 木兎さんが、うれしそうに笑う。 帰ろ、と言って立ち上がって、自分の左手と俺の右手だけをつないだままにした。 俺から放すのはなんとなく惜しくて、そのまま歩いた。 もう遅いし暗いから、だれに見られることもないだろう。 「赤葦、明日いちばん?」 「まあ、カギ持ってますからね」 「そっか~、俺もいちばん乗りしよっかな」 子どもみたいに、つないだ手をゆらす。 なんだかすごく、楽しそうだった。 木兎さんがだれよりも高く飛ぶとき、まだここにいられるだろうか。 そのとき、トスを上げるのは俺じゃない。 でも、それは悲観することじゃないのだと、本当はずっと知っていた。 赤葦、これからも、俺のためにあってね。 やさしい束縛は、甘美の響きそのものだった。

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僕ら の この 両手 が もっと もっと 救い の 手 に

もう、どうしたらいいのかわからなくなっていた。 雨に濡れるのもかまわず、新宿を歩いた。 今はただ、考え事をしたかった。 自分の娘への愛は誰しもが持っている感情。 罪のない、愛する娘が無残にも殺され、法でさえ救いの手を差し伸べなかった。 そんな事実に向かい合うために母親が出した決断は、僕には幸せを導くものとは思えなかった。 いつの間にか、僕は桜塚動物病院の前までたどり着いていた。 雨が容赦なく頬を打つ。 目に入って沁みるのも構わず、僕は灯りのついた星史郎さんの部屋を眺めた。 どんな、顔をして星史郎さんに会えばいいのかわからない。 今の自分は、何事もなかったように、接することはできないだろう。 取り繕う術も、自分には無い。 このまま自宅に帰り、星史郎さんへは電話で断りを入れたらいいのはわかっていた。 でも、自分の足は自然とここへ向かっていた。 ただ、星史郎さんの顔が見たかった。 星史郎さんの顔を見たら、すぐに帰ろう。 僕はそう決めて、桜塚動物病院 兼 星史郎さんの自宅のチャイムを鳴らした。 「やっぱりお迎えに行けばよかったですね 雨が降ったんで心配したんですよ」 星史郎さんの、穏やかな笑顔と声。 「すみません せっかくお夕飯用意していただいたのに……でも今日は考えたいことがあって……このまま家に帰ります」 「昴流くん 何かあったんですか?」 星史郎さんに名前を呼ばれて、胸がぎゅっとした。 自分でも、考えがまとまらないからうまく説明できないな…… そう思った瞬間、身体がふわりと宙に浮き、星史郎さんに抱き上げられた。 「せ……星史郎さん……!」 このまま帰したら、風邪をひかせてしまうからと、僕のショートブーツを落とすとそのままお風呂場へ連れて行かれてしまった。 星史郎さんの顔が間近にあって、僕の頭のなかはごちゃごちゃだ。 濡れた僕の服のせいで、星史郎さんの服まで濡らしてしまう…… 星史郎さんは脱衣所に僕を下ろすと、お風呂場に入って湯沸しのスイッチを入れた。 「お風呂、すぐに沸きますから。 温まらないと、風邪を引いてしまいます」 そういわれてみれば、身体が冷え切っている。 星史郎さんは手早くバスタオルや着替えを用意すると、これ、使ってくださいね、と言い残してお風呂場から出て行った。 雨の音のように、バスタブにお湯がたまっていく音がする。 僕はのろのろと濡れたコートを脱ごうとした。 手袋まで、雨水に侵食されて、手がかじかんでいる。 雨でずっしりと重みを増したコートは、インナーとくっついて中々脱ぐことができない。 もたもたしていると、星史郎さんの声がドアの向こうから聞こえた。 「昴流くん、濡れた服はこちらに入れてください」 「あっ、はっはい!」 「もう脱いでしまわれましたか?お風呂場に入られたら、濡れた服を引き払いましょうか」 脱いだどころか、コートさえもまだ着たままだ。 「あ……まだ、何も脱いでいません」 星史郎さんは、入りますよ、と断りを入れて脱衣所へ入ってきた。 「大丈夫ですか? 昴流くん 早くお風呂に……」 途方に暮れている僕をみて、星史郎さんは僕の両手首を掴むと、そのまま手首から自分の手を差し込んで呟いた。 「かわいそうに、手袋をしていてもこんなに冷たくなってるんですね」 「せ、星史郎さん!」 「早く脱いでお風呂に入らないと、風邪を引きますよ……手がかじかんで、脱げないんですね。 僕が脱がせてあげましょうか?」 「だ、大丈夫です!」 「……でも、動かない手では服が脱げないでしょう? お手伝いしてあげますよ」 星史郎さんが、僕のコートのあわせ部分を両手で持った。 「せ、せせせ星史郎さん!!」 両手で、星史郎さんの胸を押す。 僕の目をじっと見て星史郎さんは言う。 「昴流くん、同性の人間に服を脱がされるのがそんなに恥ずかしいですか?」 そう言われてみればそうなのかも知れない、そう思うと、観念して両手を下ろした。 「そう……ですね、自分でも、よくわからないのですが……どうして僕、そんなに恥ずかしがってるんでしょうか……」 髪から、しずくがぽたりと落ちた。 星史郎さんは、濡れて重たくなったコートを両手で持つと、ゆっくりと肩からはいで、どさりと床に落とした。 星史郎さんを見上げると、僕の目を見つめ、静かな声で言う。 「昴流くん……両手、挙げてください」 両手を挙げると、やはり湿っているタートルのトップスを、ウエストのところからゆっくりと捲り上げられる。 星史郎さんにされるがまま、脱がせてもらい、上半身があらわになった。 星史郎さんの視線が、僕の身体に落とされる。 何故だか、心臓がどくんと跳ねた。 ズボンの金具に、星史郎さんの手がかかる。 胸の鼓動が激しさを増す。 どうしよう。 脱がせてもらわなければお風呂には入れない。 でも……! 思わず、ぎゅっと目をつぶると、星史郎さんのおどけた声が振ってきた。 「昴流くん……手袋をはずして、手をお湯で温めたら自分で脱げるようになるんじゃないですか? 誰も見ていないところでなら脱いでもいいんでしょう?」 「は……そういえばっ」 目を開けると、星史郎さんがにっこり笑顔を見せて、僕に背中を向けて言う。 「手袋、はずしたら置いておいて下さい。 すぐに洗って乾かしますから」 床に落としたコートを拾い、かごに入れると音をたててドアを閉め、星史郎さんは行ってしまった。 大きく、ため息をついて鏡で自分の顔を見る。 青ざめているのか、赤らんでいるのか、よくわからない顔色をしていた。 最初から、手袋をはずして温めたらよかったのか。 それにしても、星史郎さんは時々、僕をからかうのが楽しいのか意地悪だ。 歯で、手袋の指先を噛んでひっぱると、なんとか手袋が脱げた。 星史郎さんが用意してくれたかごへそれを置くと、僕はお風呂で身体を温めた。 [newpage] *** 星史郎さんが用意してくれた着替えは、彼のパジャマだった。 もともと、パジャマは大きめを着るけれど、星史郎さんのそれはもっと大きくて、改めて自分の子供さ加減を知らしめられたようで、少し情けない。 特にウエスト部分が大きくて、押さえていないと落ちてしまいそうだ。 「おやおや、昴流くんには少し大きすぎましたかねぇ……脱げちゃうならいっそ、脱いじゃいましょうか……? なんならお手伝いしましょうか」 先ほどの調子でそういって、星史郎さんは僕の背後へと回った。 「えっっ!? あ、あの、大丈夫です!せっかく貸していただきましたし、もう眠るだけですから……」 「そうですか……じゃあ、ベッドまでご案内しますよ。 ほら、押さえててあげますから」 星史郎さんはそう言って、後ろから僕の両腰を押さえ、寝室へと連れて行ってくれた。 ……あ、ありがとうございます。 あの、自分で押さえられますから……」 振り返りながらそういうと、星史郎さんの顔がすぐそばにあるのに気づき、また、胸が鼓動を打つのを押さえられない。 星史郎さんの煙草の香りが鼻腔をくすぐり、彼の体の熱が伝わってくるのをパジャマの布越しに感じた。 [pixivimage:35933497] 「すみません、もう大丈夫ですから……その……もう離してくださって大丈夫ですよ?」かろうじて言葉を搾り出すと、星史郎さんはにこりとして手を離す。 「すみませんでした。 昴流くん、押さえながら歩くと転んでしまいそうでしたので」 「いえそんな! 僕の方こそ! ありがとうございました……っ、お、おやすみなさいっ!!」 そういうと僕は、パタパタと寝室へ逃げ込んだ。 バタンとドアを閉めると、ドアに背を持たせかけ、ずるずるとずり落ちるとそのまま床に座り込む。 胸に手をやると、まだどきどきと心臓が波打っている。 「びっくりした……。 まだ、ドキドキしてる。 どうしちゃったんだろう、僕……」 大きく息を吐き、膝を抱えて組んだ両腕に顔を埋めると、パジャマから洗い立ての香りと、ほのかに煙草の匂いがした。 星史郎さんの匂い…… 「昴流くん?」 パジャマに顔をうずめていると、ドアがノックされ、星史郎さんが静かな声で呼びかけてきた。 「すみません……ちょっと寝室に置き忘れた物があるので……入ってもいいですか?」 「っっっ! あ、はいっ! ど、どうぞ! 」 そう返事をして僕はあわててベッドにもぐりこみ、頭から毛布をかぶった。 ドアノブが金属音を立てるのを控えるように、静かにドアを開けて星史郎さんが入ってくる。 「……もうお休みになってるんですか……」 僅かに笑みを含んだ声で呟きが落ちてきた。 「は、はい……あの、忘れ物って……」 毛布から、目だけを出して言った僕に星史郎さんは笑いかけ、ベッドへと近づいてきた。 「眼鏡、置き忘れていましたので」 ベッドに膝をつくと、僕の頭上を通り越し、ベッドヘッドにあった眼鏡に手を伸ばす。 ギシッとベッドが軋む音がする。 「わっ!! 」 眼鏡に手を伸ばす星史郎さんの身体が顔の前に近づいて、僕は思わず毛布を頭の上まで引っ張り上げた。 さっきからずっと胸の鼓動が収まらない。 顔も熱があるかのように火照っているのがわかる。 「昴流くん、どうしたんですか?」 今顔を出したら赤くなっているのがわかってしまいそうで。 「……仕方ないですねぇ」 あきれたような声だったけど、どこか暖かい声で星史郎さんは呟く。 また、ギシッとベッドがきしむ音がして、星史郎さんがベッドに膝をついたのがわかった。 僕の頭が枕ごと沈む。 一瞬、何が起こったのかを考える。 星史郎さんが僕の顔の横で両手をついたのだとわかった瞬間、毛布越しのおでこに柔らかい物を感じた。 「おやすみなさいの挨拶を、僕からはしていませんでしたから。 おやすみなさい」 足音が遠のき、ドアの閉まる音が聞こえた。 心臓が口から飛びでそうで、僕は口を両手で押さえる。 (いっ、いっ、今のは……) これまで、抱きしめられたことはあっても、口付けを受けたのは初めてだった。 星史郎さん、星史郎さん、星史郎さん……嬉しいような、恥ずかしいような、たとえようもない感情が、僕の体をかけめぐる。 僕はどうしてこんなにも、星史郎さんのことで胸が騒いでしまうのだろう。 星史郎さんの落ち着いた声、優しいまなざし、僕を抱きかかえてくれたときの逞しい腕……星史郎さんといると安心する、星史郎さんが笑いかけてくれると嬉しくなる。 僕は…… 身体が温まったためか、急激に眠気が僕を包み込む。 僕は星史郎さんのベッドの中で、素直に眠りに身を任せた。 2013.

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